そして、いよいよ七夕が退院する日がやってきた。七夕は車椅子だから、長距離を移動するのは僕にも七夕にも負担になっしまう。そう思って、僕は車をレンタルしてきた。
七夕は私が持つと言って譲らなかったから、カバンを渡して、持ってもらった。
僕と七夕は、先生と看護師さんにお礼を言って、病院を出た。
これからは、定期的な通院とリハビリで病院と家との往復をすることになる。七夕と同じように、不安も嬉しさも両方あるけど、ひとまずはここまで七夕が来れたことにとても安心してる。
車に乗って、家まで向かう。最初はその予定だったけど、、
七夕にとっては、久しぶりの外出だ。車から降りないなら負担にもならないだろうし、願いを叶えてあげたい。
道を変更して、海沿いへ向かう。車椅子でどっかの施設に行くのは慣れてないし、負担がかかりすぎてしまうから、海風を浴びに行くことにした。砂の場所でなければ七夕が外に出ることも出来る。
七夕と、これからどこに行きたいか、今までの分を取り戻せるくらいに出かけたいねと話した。でも、七夕は車椅子であることを気にして、テーマパークやレジャー施設は大きいところがいいとか、僕が疲れないところがいいとかって言ってた。僕の心配なんてしなくていいのに、、
そんな話をしている間に広い海が見える駐車場へ着いた。ここなら七夕が降りても大丈夫だ。車さえ気をつければ、安心して外の空気を感じられる。
車から七夕を降ろして、安全な場所へ移動する。久しぶりの外出に七夕の表情もだいぶ明るくなっていた。そんな七夕を見て、僕は安心した。連れてきてよかったと心の底から思えた。
このあと、しばらくここで海を眺めていた。2人でこうしてゆっくりしていられるのが、僕には本当に嬉しかった。
そのあと、七夕を車に乗せて、スーパへ向かった。夕飯の食材とか、これからの生活に使えそうなものとか一緒に決めて、一緒に買った。もちろん僕は七夕と一緒にいられて嬉しかったけど、何より、幸せそうな顔をしている七夕がいることが嬉しかった。
帰ってからは七夕の荷物を片付け、七夕の居場所を作り、一緒に夕飯の準備をした。七夕と一緒に作るご飯も、一緒に食べるご飯も何ヶ月ぶりで、本当に本当に嬉しかった。これからの不安なんて忘れてしまうほどに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!