退院してから2週間がたった。私は今、車椅子生活の大変さに打ち付けられている。しょうくんが必死で助けてくれるけど、毎日しょうくんがいてくれるわけじゃないし、しょうくんにだって仕事がある。病院にいた頃は、毎日お昼の時間を削ってくれてまで来てくれたけど、今はそうもいかない。病院に行くにもしょうくんの助けが必要だ。だから、病院の先生にもリハビリの先生にも相談して、時間をずらしてもらったし、家で出来ることを最低限はする約束をした。
なのに、1人でできることが少なすぎて、、、前と比べてしまっている自分自身も悪いのはわかるけど、やっぱり悔しいよ。
だけど、しょうくんが支えてくれるのを裏切りたくないから、頑張りたい。
しょうくんは帰ってくると、必ず私の心配をしてくれる。初めは、慣れなくて、昔のしょうくんよりもミスして、指切ったり、車椅子のまま転がっちゃったりしてたからなんだと思う。
本当は、できないことがあったとか、悔しいよとか言いたいけど、今こうやって家にいれるだけでもすごいことなんだし、それをわかってるから言わないでおいた。しょうくんが支えてくれるのに甘えっぱなしも良くないけど、焦って今以上に迷惑かけるのはもっと良くないから。
歩いてすぐのスーパーに2人で夕飯の買い物に行く。それだけで、幸せなことだってわかってるから、何も言わない。
このあと、餃子を作るのに必要なものと明日の朝ごはんのものを買って、家に帰った。
退院してすぐに、高さが変えられる机を買った。椅子に座っても、車椅子のままでも、これ一つあれば楽だからって、しょうくんが調べてくれてた。
これがあるからか、料理もキッチンに立たなくてもできるようになった。ガスとか水道は使えないからそれ以外だけだけど。
私は包丁を握り、餃子に入れるキャベツとニラを切る。
しょうくんがお肉と、皮と、トレイを持って来た。
しょうくんがお味噌汁を作ってくれている間に、餃子を焼く直前までの状態に仕上げる。私は手先が器用な方だから、割と綺麗な形でできてると思う。ただ、ちょっとおっきかったかも、、
運動量が断然に落ちて、体にお肉がつきやすくなった。トレーニングもしにくいし、食事量で調節しないといけない。けど、しょうくんは食べなすぎだ、って。体調を壊してないから、大丈夫なのにね。
私が作った餃子をしょうくんが焼いてくれて、大きな餃子が出来上がった。大きかったからちょっと熱すぎて、食べるのに苦労したけど、すごい美味しかった。2人で作る料理はやっぱり幸せを運んでくれる。欲を言えば、キッチンに立って、2人で作りたいんだけど、、、
このあとは、お風呂に入って、マッサージと簡易的なリハビリをする。するって言うか、全部やってくれるんだけど、、
最近考えるようになったのは、こうなる前のこの時間は私たちは何をしてたんだろうって。戻ることが出来ないとわかってから、昔のことを振り返らないようにしてきた。そのためにも、アルバムを作って、思い出を閉じ込めた。だけど、いざこうやって環境が元に戻ると、心が走り出してしまう。
どこかで、諦めきれていない自分がいる 。そんなことはわかってたのに、、、
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!