私は女性の方を見ながら何も言わずに頷いた。
女性は笑顔を見せてくれた。
正直、どこか知らない怪しげな場所に連れていかれるんじゃないかと、少しだけ思っていたけど杞憂だったようだ。
着いた場所はレトロでお洒落なカフェテリア。
初めてこんな凄いお店に入ったから思わず唖然としてしまった。
女性はクスッと私の顔を見て笑うと、定員さんと共に席へと案内してくれた。
ちょこんと椅子に座る。
女性も私に続いて座る。
幾羽美夢さん…。
この人が私の命の恩人なのか…。
私は生まれて間もない雛鳥が親鳥の姿を見た時のように、幾羽さんの顔をまじまじと見た。
そう、私の名前は沙月。
でもこれが、両親が付けてくれた名前なのか、主さんが付けてくれた名前なのかは分からない。
私は沙月。
ただそれだけ。
名前に関しては特に思いれなんてなかった。
やっぱりもうゲームは始まっているのか。
まぁそんな気はしてたけど。
…いつの間に。
幾羽さんは「ふーん、へー」とか相槌をうちながら嬉しそうにしていた。
何かおかしい所でもあったかな?
私が小首を傾げると幾羽さんは反応してくれて訳を説明してくれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!