月が辺りを照らし、空は星が見えるほど晴れていた夜のこと。
最近は観察依頼が多く、久しぶりの休みってことで気持ちよく寝ていた私を起こしたのは、野太い男達の叫び声だった。
「「ウオォォォォォォォォオ!!!!」」
重い瞼を持ち上げ頭の上にあるスマホで現在の時刻を確認。
…午前1時すぎ、深夜に叫ぶとか頭おかしいんじゃないの?
睡眠を邪魔された私はイライラしながら窓の外を見ると、そこに現れたのは大量の男だった。
そこには、パッと見じゃ数え切れないほど沢山の男達が同じ方向を向いて歩いていた。
まるで行進しているかのよう。
旗を掲げている人がいるな、あの印は…獅子王?!
こんな夜遅くに…しかも獅子王?あの天下の獅子王が?
とにかくこんな景色を見るのは初めて。
不思議に思った私はすぐさま着替えて外へと飛び出した。
仕事の理由で、私の居場所が特定されないようにするもあって、人気のない静かな所に住んでいるのだが、これでは全く意味をなしていないな。
玄関から出てすぐの道路にはもうすでに獅子王達の行列が見える。
呆れながらも、内心では少しワクワクしている自分がいた。
目をつけられると面倒臭い事になりえる…私は隠れながら男達と同じ方向へと歩いていた。
しばらく歩いていると大きな空き地に出た、端っこには捨てられた家具等があり、地べたは砂利で覆われていた。
その先には1人の男が。
獅子王の奴らはその男に向かって歩いていたみたい。
私は家具の物陰に隠れて、獅子王とその男の会話を聞いていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。