上手く呼吸が出来なくても僕は走り続けた
僕には…あなたが必要だから…
下を向いていて僕に気付くこともなさそうだった
何度も何度も叫んで…
あと少しのところで僕の手は届かなかった
飛行機に乗った時に泣き崩れているあなたが見えた
僕だって…涙を拭えないじゃん…
小さい嗚咽が大きな泣き声に変わった
やっぱり…涙なんて止まること無かった
そして…いつしか涙は枯れていた
もう…なにしてたかわからない…
気が付けば病院のベッドに居た
僕は…意識を手放して…気が付いた時にはまた病院のベッドだった
苦しかったことも…なにも…身体が楽になって…
みんな泣き崩れていた
よくよく話を聞くと…僕は病気にかかったらしく…
ドナーが必要になったみたいだった
ようやくその手術が終わったところだという
でも…無性にドナー提供者が気になった
みんな…黙りこくって口を割らない
僕は近くのテーブルに置いてあった紙を見た時…泣き叫んだ
枯れて出てこないと思ってたのに…
こんなに残ってたのかよ…
ううん…どうせ…あなたの涙なんでしょ…?
なんで…こんなにも全部が全部上手くいかないの…
嫌だよ…遠いところに行かないで…
僕も…追いかけたいのに…
生憎追いかける勇気も持ち合わせてはいなかった
ねぇ…涙が止まらないよ…?
泣いてなかったの…?
いや…違う…泣けなかったんじゃない…?
僕は…君がいたから生きれているんだよね…?
君がいないと僕は居ないんだよね…?
生きるよ…ちゃんと…
でも…死ぬのも…生きるのも怖い…
そっちに行くのも…ここに残るのも…
だから………
ここに…居たくないよ…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。