第21話

& 🍊 -遠距離恋愛-
442
2020/08/16 21:39




梅雨の季節。今日はつかの間の晴れだ。


弱い風が髪をなびかせる。







──あったかいおひさまの香りをたっぷり溶かしこんだ風だね




きっと彼はこの蒸し蒸しした生暖かい風も


こんな風に美しく例えるだろう。





彼がいれば、腹立たしい日本の四季の移り変わりも



美しく変わりゆく景色として楽しみ、胸を躍らせたのかな。




(なまえ)
あなた
すんぐぁな……




名前を呼んでも返事はない。




彼はここにいないから。声の届かない遠いところにいるから。








私の彼氏─すんぐぁなは今、韓国にいる。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




すんぐぁん
すんぐぁん
あなた、僕韓国に行く



その報告は唐突だった。



(なまえ)
あなた
え?お正月でもなんでもないのに?
すんぐぁん
すんぐぁん
あのね、僕もっと歌上手くなりたい
すんぐぁん
すんぐぁん
韓国で教えてくれる人が見つかったの
(なまえ)
あなた
そしたら、私は……どうしたらいいの…?
すんぐぁん
すんぐぁん
ほんとにごめんね
すんぐぁん
すんぐぁん
遠距離だけど…大丈夫?
(なまえ)
あなた
やだ!すんぐぁながいないと私……!
すんぐぁん
すんぐぁん
僕だって辛いよ!
すんぐぁん
すんぐぁん
でも……




.
すんぐぁん
すんぐぁん
僕は夢を捨てられない





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




そしてすんぐぁなは旅立って行った。







彼が韓国に行って3ヶ月。



彼からのメールなどはぽつぽつ来るが、

自分からはアクションを起こせなかった。




(なまえ)
あなた
会いたいよ……



彼の感性は豊かで、私にたくさんの景色を見せてくれた。




今まで何気なく過ぎていった日々も、


すんぐぁなといると毎日が濃くて貴重だった。





──ほら見て、太陽が桜のピンクを作ってる〜


──雪だよ!空から柔らかいダイヤモンドが降ってるみたい!







すんぐぁなは夢を追いかけて韓国へ行った。



彼ならなんでもできると信じてたけど、笑顔で見送れなかった。





(なまえ)
あなた
すんぐぁなに、会いたい……!



涙が頬を伝う。




こんなに寂しい気持ちを毎日体感していたら死んでしまいそう。





すんぐぁん
すんぐぁん
あなた……



近くですんぐぁなの声がした。



とうとう幻聴も聞こえるようになっちゃった………






え?



すんぐぁん
すんぐぁん
あなた!
(なまえ)
あなた
すん、ぐぁな…!?
すんぐぁん
すんぐぁん
やっと会えた〜!!



すんぐぁなに抱きしめられる。



久しぶりの優しい香り。






大好きなすんぐぁなが、ここにいる。





(なまえ)
あなた
え!?すんぐぁな?
(なまえ)
あなた
うう……っ、おかえりすんぐぁな〜‪( ;ᯅ; )‬
すんぐぁん
すんぐぁん
あなたに会いたくて帰ってきちゃったよ〜!
(なまえ)
あなた
えぇ……歌のレッスンは?グスッ
すんぐぁん
すんぐぁん
あなた、聞いて!




.
すんぐぁん
すんぐぁん
僕のデビューが決まったの!
(なまえ)
あなた
デビュー!?
すんぐぁん
すんぐぁん
うん!あなたがここまで応援してくれたからだよ〜!
(なまえ)
あなた
すんぐぁな…すごい
すんぐぁん
すんぐぁん
でしょ?


.
すんぐぁん
すんぐぁん
いや〜日本も久しぶりだな〜
(なまえ)
あなた
今日はちょっと蒸し暑いでしょ?
すんぐぁん
すんぐぁん
ううん







.
すんぐぁん
すんぐぁん
あったかいおひさまの香りをたっぷり溶かしこんだ風だね





また、私の毎日が明るく彩られる。




すんぐぁなといっしょに。


















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