仕事帰り。
私の足は自宅ではなく公園に向かっている。
夜の公園には、彼が待っている。
彼とは公園で知り合った。
彼と会うと仕事での疲れが癒される。
気を使わずに話せる唯一の存在だ。
私たちは公園でしか会うことはない。
それ以上の関係はないのだ。
だから私たちはお互いの名前も知らない。
そして私たちはキスをする。
名前も知らない君のあたたかさが伝わってくる。
それに安心している私がいる。
私たちは少し変わっているのかもしれない。
私たちは愛し合っている。
それにお互い気づいている。
でも公園の外で会うことは絶対にない。
'不可能'だから。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
家に帰って何となくテレビをつける。
今日は歌番組が放送されていた。
最近人気のアイドルグループ、SEVENTEEN。
その中に、君がいる。
ブチッ
私はテレビを切った。
彼の名前は聞きたくない。
名前を聞いたらすごく遠い存在になってしまうと思うから。
私は彼がアイドルだって知っている。
でも私は知らないふりをする。
彼と離れたくない。
公園で話している時だけ、私たちは対等な関係になれる気がした。
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次の日も、そのまた次の日も私たちは会う。
公園にいる時の彼は'アイドル'じゃない。
その瞬間を独り占めしたい。
私たちは、これ以上の関係にはなれないけど
このくらいの愛がちょうどいい。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!