第25話

& 👶 -アイドル-
444
2020/08/27 06:29





仕事帰り。





私の足は自宅ではなく公園に向かっている。









夜の公園には、彼が待っている。





ばーのん
ばーのん
おつかれ
(なまえ)
あなた
そっちもね



彼とは公園で知り合った。




彼と会うと仕事での疲れが癒される。


気を使わずに話せる唯一の存在だ。







私たちは公園でしか会うことはない。



それ以上の関係はないのだ。





だから私たちはお互いの名前も知らない。



(なまえ)
あなた
今日は上司に飲み会誘われたんだけど断ってきちゃったㅎ
ばーのん
ばーのん
え、それいいの?ㅎ
(なまえ)
あなた
だって今日も君が待ってると思ったから
ばーのん
ばーのん
ありがとう
ばーのん
ばーのん
僕もあなたが来ると思って待ってた



そして私たちはキスをする。




名前も知らない君のあたたかさが伝わってくる。


それに安心している私がいる。






私たちは少し変わっているのかもしれない。





ばーのん
ばーのん
やっぱり僕、あなたじゃないとダメみたい
(なまえ)
あなた
私も君じゃないとダメだよ
ばーのん
ばーのん
好き
(なまえ)
あなた
私も好き




私たちは愛し合っている。




それにお互い気づいている。







でも公園の外で会うことは絶対にない。


'不可能'だから。




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




家に帰って何となくテレビをつける。




今日は歌番組が放送されていた。






えすくぷす
えすくぷす
Say the name
SEVENTEEN
SEVENTEEN!あにょはせよ~!SEVENTEENいむにだ~!!





最近人気のアイドルグループ、SEVENTEEN。




その中に、君がいる。






ばーのん
ばーのん
あにょはせよ~、SEVENTEENの




ブチッ





私はテレビを切った。









彼の名前は聞きたくない。



名前を聞いたらすごく遠い存在になってしまうと思うから。








私は彼がアイドルだって知っている。





でも私は知らないふりをする。









彼と離れたくない。



公園で話している時だけ、私たちは対等な関係になれる気がした。






┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈




次の日も、そのまた次の日も私たちは会う。




ばーのん
ばーのん
おつかれ




公園にいる時の彼は'アイドル'じゃない。




その瞬間を独り占めしたい。





(なまえ)
あなた
好き
ばーのん
ばーのん
僕も好きだよ






私たちは、これ以上の関係にはなれないけど




このくらいの愛がちょうどいい。





















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