目を覚ましたアズサは、周りをキョロキョロと見回した。
どこを見ても真っ暗だ。
重い体を起こし、立ち上がる。
暗闇に目が慣れてくると、細長い幹や低い枝のシルエットが視界に浮かんでくる。
どうやら森の中らしい。
しかし、湿った土の匂いも草の香りもなく、代わりに何かが腐敗したような臭いだけが重く漂っていた。
案外近くにいた香瑠は、大きな木の幹に背中を預け、膝を抱え座っていた。
大きな体を小さくして、空気と同じようにどんよりとした目をしている。
ブツブツと現実逃避を始めた香瑠。
アズサはそんな香瑠の肩を掴んでゆっさゆっさと揺らした。
虚ろな目をした香瑠が、アズサを見上げる。
香瑠の言葉をさえぎるように、
ガサッ、と茂みの奥から物音が聞こえた。
2人は咄嗟に視線をそちらへ向ける。
するとその茂みから、おぞましい生き物が這い出てきた。
例えるなら、死んで腐ったさまざまな動物たちの成れの果て。
異臭を放ち、ところどころ骨がむき出しになった魔物たちが、次々と湧いて出てきた。
ゆっくりと、アズサと香瑠の周りを取り囲んでいく。
首がちぎれかけた狼のような魔物が、ついに2人に襲いかかってきた。
バッと香瑠がアズサの前に飛び出す。
その腕に、狼の魔物がガブリと噛みついた。
赤い血が飛び散る。
――私を庇っておとりになるつもり?
いつも、喰ってやると脅していたくせに。
アズサは落ちていた木の枝を引っ掴むと、それを香瑠の腕に噛みついていた狼の魔物に叩きつけて振り払った。。
そして香瑠を後ろに庇いながら、魔物たちに向かって木の枝を突きつける。
猪の魔物が突進してくる。
アズサはひらりと身をかわすと、折れないよう枝をぐっと握りしめ、狙いを外さぬよう先端を魔物の眼へと鋭く向けた。
突進してきた魔物は、自らの勢いでその枝の尖端が眼球を貫き――呻き声をあげてドサリと崩れ落ちた。
もちろん漫画だ。
新しい木の枝を手にしたアズサは、鋭く魔物たちを睨みつけた。
トン、とアズサの背中に何かが重なる。
香瑠がアズサの背中に自分の背中を合わせて立ったようだ。
お互いの背中を預けた2人は、襲い掛かってくる魔物たちを次々と薙ぎ払っていったのだった。
いくら倒しても倒しても、次々に魔物は湧いて出てくる。
さすがのアズサと香瑠も、もう息は絶え絶え、ボロボロになっていた。
話している間にも、魔物は容赦なく襲ってくる。
この森も魔物もすべて、魔王の思考から生み出されたもの。であれば、魔王と同じ悪魔である香瑠よりも、人間のアズサのほうが思いがけない方法で突破できるということだろうか。
――ふとアズサの中にある考えがよぎる。
それと同時に、香瑠の背中に向かって爪の鋭い魔物が飛びかかっていくのが見えた。
咄嗟に香瑠を突き飛ばす。
熱い、と思った時には、突き飛ばした腕から血が噴き出していた。
血相を変えた香瑠がアズサに駆け寄ってくる。
傷口を押さえる香瑠の手が、血で汚れていく。
最初から魔王は、アズサを認めるつもりなどない。
魔王の狙いは、この森から抜け出すために、香瑠にアズサの魂を食べさせることだ。
止血していた香瑠の腕を引きはがす。
そのまま、自分の首元に強く押し当てた。
目を見開いて手を引こうとした香瑠の手を、離れないように強く握りしめる。
香瑠の周りに、キラキラが舞う。
しかし、そのダイヤモンドダストはいつもと明らかに違っていた。
粒はひときわ大きく、本物のダイヤモンドさながらに七色の光を放つ。
やがてその輝きは強まり、ついに香瑠を包み込んだのだった。
<続く……>















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。