第46話

2/3の記憶 5
587
2023/08/23 09:36
渡辺side



あれから1年が過ぎた。

俺は、目黒に告白した直後、福岡に引っ越した。



別に告白がきっかけではなかった。

新しく仕事を始めることにした友人に、一緒に仕事をしないかと誘われ、転職することがあの時にはすでに決まっていた。


まあ、それもあって目黒に話してしまったのだが…





新しい生活は思っていたよりも快適だった。

仕事も軌道に乗り、やりがいも出てきた。



ある日、仕事が一区切りついた事もあり、社員みんなで食事に出かけた。

とはいえ、社員は5人だけなのだが



居酒屋で飲んでいると、後ろから声がした。


目黒蓮
翔太君?

俺は幻聴か何かなのかと思った。

いるはずのない大好きな声。



するともう一度声がした。
目黒蓮
翔太君だよね

俺は驚いて振り向いた。

すると目の前に目黒がいた。



渡辺翔太
何で?
目黒蓮
それ、こっちのセリフ



すると、俺を転職に誘った友人が言った。


「彼、幼馴染なんだろ」

渡辺翔太
そうだけど…
「俺が呼んだ。話したいって言ってて。お前、転職の話もしないで、こっちに来たんだって」
渡辺翔太
だからって
「いやあ、なんかさ~」



すると目黒が言った。

目黒蓮
翔太君、俺の性格知ってるよね?
俺、諦め悪いんだよ
「そうそう。だってさ、2か月ぐらい? 翔太に会わせて欲しいって連絡してくるんだもんなぁ。まあ、少し二人で話したら。俺ら別の店行くよ」
目黒蓮
いえ、俺と翔太君が移動するので。
今日はありがとうございました
「いいよ。なあ、翔太。ちゃんと話して来いよ」


「…」





目黒は俺の上着と鞄を手にすると、店を出て行った。


俺は慌てて後を追いかけた。



俺の前を歩く目黒の腕を捕まえる。

渡辺翔太
お前、何でここいんだよ
目黒蓮
探した
渡辺翔太
どうやって




目黒の話はこうだ。



俺を探して、元の会社の後輩にも協力してもらったが居場所は分からなかった。

だが、4か月前に偶然、ある動画を見つけたと彼から連絡があった。


それは結婚式で歌った男性を撮った映像で、歌うまとしてアップされたものだった。

その映像を撮った人とDMでやり取りをして2か月前にやっと俺のいる会社を見つけたと。

その後、友人を説得して、やっと友人の協力を得て、ここに来たらしい。
渡辺翔太
お前なぁ… 
あいつ心配してるぞ。
さっさと帰れ
目黒蓮
大丈夫
渡辺翔太
付き合ってんだろ…



俺がいなくなれば、目黒はきっとあいつの傍で彼女を支える。


彼女も最初はそんな気がなくても、こいつが本気になれば好きにならないはずはない。



二人が恋人になったのなら…

渡辺翔太
よかったじゃん

俺はそう言って笑った。



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