第41話

友の記憶 最終話
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2023/05/15 09:00
阿部side




佐久間が泣きながら俺の後を追いかけてきた。

その顔を見て、確信したんだ。



やっぱり佐久間が好きだ。

愛おしくてたまらない。



なぜ泣いていたのかは分からない。

でも、俺は佐久間を守りたいって思ったんだ。


佐久間が泣いていたら、その涙は俺が拭ってあげる。

俺の腕の中で思いっきり泣いて欲しい。

強がらなくていい。

俺の前では、アイドルじゃない佐久間で、感情に素直なままでいて欲しい。





仕事を終えた後、二人で散歩がてら歩きながら帰ることにした。

佐久間は黙ったままだった。

俺もあえて話しかけなかった。



すると佐久間が突然、スマホを取り出し、電話をかけた。

不思議に思っていると、俺のスマホに佐久間から電話がかかってきた。

隣りにいる佐久間を見ると、佐久間は少し寂し気な笑顔を見せた。

それを見て、俺は通話ボタンを押した。

阿部亮平
どうした?
佐久間大介
なんか、昔、阿部ちゃんが電話くれた時、嬉しかったのを思い出して
阿部亮平
隣にいるのに電話?
佐久間大介
うん。面と向かうと言えない気がした
阿部亮平
ん? なんか言いにくいこと?
佐久間大介
うん。阿部ちゃん。俺ね。
阿部ちゃんと友達やめたいんだ
阿部亮平
えっ!

俺は驚いて佐久間の顔を見た。
阿部亮平
佐久間? 
俺、なんかした? 
友達やめるって… 
俺、嫌だよ


すると佐久間が俺の顔を見ながらスマホで話を続けた。
佐久間大介
阿部ちゃん。俺にとって阿部ちゃんは最高の、メチャクチャ大事な友達だったんだ
阿部亮平
俺だって。だったらなんで?
佐久間大介
ごめん。俺ね。
… 好きになっちゃった
阿部亮平
… 好きな人が出来たの? 
ねえ。なんで俺が友達じゃ駄目なの? 
その人が俺を嫌いなの? 
俺はどうしたらいい? 
俺、嫌だよ。
佐久間と友達でいられないなんて嫌だ。

あれ。泣いてる…


俺 泣いてる。




俺、こんなに佐久間が好きなんだ。

すると佐久間はスマホをポケットにしまって、俺と向き合うと俺の涙を拭いた。

佐久間大介
阿部ちゃん。俺は阿部ちゃんが好きなんだ。
だからもう友達じゃ辛いんだ。
阿部亮平
えっ
佐久間大介
今日ね、振られる覚悟で告白するって決めた。
でも、俺の気持ちを知ったうえで友達でいて欲しいなんて身勝手だなって。
だからこれからはメンバーとして、
まあ今までと あんまり変わんないか

佐久間はそう言って無理やり笑った。



俺は佐久間を抱きしめた。

阿部亮平
なんだ…
佐久間大介
阿部ちゃん?
阿部亮平
俺と同じじゃん。
俺も佐久間が好き。
でも言ったら関係が壊れると思って言えなかった
佐久間大介
うそ
阿部亮平
ほんと。
佐久間。大好き

すると佐久間は花が咲いたようにパアっと華やかな笑顔を見せた。
佐久間大介
阿部ちゃん。俺も大好き!
阿部亮平
さくま~



あ~。愛おしい。

可愛くてたまらない



これは俺の彼女って事?

彼氏か?



俺の中にすっぽり収まったはずのピンクの頭がモソモソ動き出した。
佐久間大介
阿部ちゃん。苦しい

そう言って頬を膨らませて佐久間は怒ってみせた。



なんてアザと可愛いやつなんだ。
阿部亮平
これは逮捕だな
佐久間大介
え~。それは俺のセリフ!
阿部亮平
どう見ても、今は佐久間の方があざとくて、可愛いから(笑)

すると佐久間は嬉しそうに言った。

佐久間大介
じゃあ。無期懲役にして。
ずっと俺の事捕まえて。
どこにも行けないよに。
阿部ちゃんのものにして
阿部亮平
佐久間… 
無期懲役って 
なんかなあ… でも…

俺は周りを見渡し、人気のないとことに佐久間の手を引いていった。


そして軽くキスをすると、言った。

阿部亮平
ずっと俺の隣りにいて。
大好きだよ。大介
佐久間大介
はい! 逮捕
阿部亮平
え~。俺、真面目に言ってるのに
佐久間大介
今のは逮捕案件です。
俺、めちゃめちゃドキドキしたじゃん。名前呼び
阿部亮平
ドキドキしたんだ?
佐久間大介
したよ。嬉しいもん
阿部亮平
ねえ。今日は一緒にいたいな。
ほんとはね。前から思ってたの。
また二人で旅行行こうよ
佐久間大介
うん。じゃあ、今日は一緒に計画経てよ
阿部亮平
うん。

俺たちは、最高の笑顔で、友達をやめた。



そして、今日からは恋人だ。





どっちが彼氏? って問題はあるけど…



それもゆっくりね。

時間をかけて、

この先も



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