渡辺side
俺がこの想いに気づいたのはいつだったんだろう?
いつの間にか目で追っていて、好きだなんて気にもせず、一緒にいるのが当たり前だと思っていた。
けれど、俺は自分の思いより先に気が付いた。
二人の目線。
彼女が追う俺への視線。
その彼女を追う彼の目線。
二人が大切な存在であることは、考える必要もないくらいに俺が感じてきたことだ。
そんな三人の関係を壊しかねない互いの視線に俺は少し怖気づいた。
恋愛以上に失いたくない友情。
けれど、それは本当に自分が望むことなのだろうか?
俺が望む未来は、ずっと変わらない三人でいることなのだろうか?
そんなことを考えて、俺は自分で自分の気持ちから目を逸らしてきた。
気づきたくないんだ。
それは気づいているから思うこと。
俺の想いが恋である証拠。
それを受け入れたくない弱い自分。
本当は全て独り占めに出来るなら。
あの微笑みを自分だけのものに出来るなら。
そう願っては、自分でその思いに蓋をする。
ごまかすように、特別な好きがあるわけでもない人と、楽しければという思いだけで付き合うこともあった。
けれど、そんな思いは相手に見抜かれる。
結局、長続きなどしない。
恋
気づかなければ良かった。
欲
知らなければ良かった。
どちらも大切だと言い訳して、
一歩も踏み出さない
俺はズルい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。