第13話

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2020/03/06 06:28
ハル
ハル
・・・・・・
ハルは、病室に戻り、唖然としている。
洋一
洋一
おかえり、お二人さん
俺は、ハルの言うことを聞かずにまた、歌っていた。
果林
果林
洋一?まだ、続けていたの?
洋一
洋一
あと、5日しかないからな
ハル
ハル
洋一、俺の言うことが聞けやんのか?
洋一
洋一
ええやろ?別に。俺のからだのことは、俺が一番よくわかってる。
果林
果林
洋一!ハルくんはね
ハル
ハル
果林・・・
果林
果林
ハルくん?
ハル
ハル
さっきも言うたやろ?俺との約束守れやんかったら、もう部屋に来るなって
洋一
洋一
ええよ?行かんから
ハル
ハル
お前、あれだけ迷惑かけといて
洋一
洋一
どうさたんや、ハル。さっきから、何を怒っているんや
ハル
ハル
・・・・・
果林
果林
・・・・・・
ハル
ハル
とにかく、アイドルは、喉が命なんや!1歩も、動くな
洋一
洋一
ハル?
言うてることが、ちぐはぐや
ハル
ハル
頼むから・・・・無理・・・するな・・・・
洋一
洋一
・・・
なんだか、彼の声が掠れている・・・・

泣いているのか?
ハル
ハル
・・・・・・・
洋一
洋一
ハル・・・あの・・・
ちゃんと謝ろうと思った。ハルがこっちを向いてくれたら・・・
ハル
ハル
・・・
ハルは振り返った。けど、果林が
果林
果林
ハルくん!待って!わたしも、帰る
俺たちが、殴り合い?のケンカでもするんじゃないかと思ったのか遮られてしもた。
ハル
ハル
・・・・・俺
ハルがなにかを、言おうとした瞬間・・・・・
ハル
ハル
うっ・・・・・
ハルの体はぐらついた・・・
洋一
洋一
ハル?
ガッシャーン
花瓶に当たり、割れてしまう
果林
果林
ハルくん?
ハル
ハル
・・・ハァハァ・・・・
洋一
洋一
ハル?どうしたんや・・・・
静香
静香
あっ!
花瓶の割れる音に静さんは、気づいた
ハル
ハル
果林・・・・・・・そこの薬取って・・・
なんだか、苦しそうなハル
果林
果林
うん、わかった
果林がハルに薬を渡した。
洋一
洋一
306号室の多田です・・・あ
ハル
ハル
呼ばなくていい・・・すぐ、収まるから・・・・
洋一
洋一
でも、俺より苦しそうや・・・
ハル
ハル
お前の風邪がうつってしもたんかもな。はー、苦しかった
洋一
洋一
・・・・ハル?
ハル
ハル
うがいしてくるわ・・・・
洋一
洋一
・・・?
果林
果林
洋一も、少しはハルくんのことを、考えたら?
ずっと心配していたんだよ?こいつ、絶対無理するって
洋一
洋一
大丈夫や。俺、丈夫やし
果林
果林
それが、彼にとって辛いことなのよ。
あーあ、花瓶割れちゃったね・・・
その頃、まだ、苦しそうにしているハル。
ハル
ハル
・・・・・・
静香
静香
ハル、あなた大丈夫なの?
ハル
ハル
あっ・・・・静香・
静香
静香
再発したらどうするのよ
ハル
ハル
心配するなって。
ちょっと大きい声を出しすぎただけや・・・・・
静香
静香
心配なのよ・・・・
せっかく完治しかけてるのに・・・
果林
果林
・・・・・?
ハル
ハル
大丈夫
そして、病室に戻ってきたハル。
洋一
洋一
ハル・・・
ハル
ハル
なんや、まだ、寝てなかったんか・・・・
洋一
洋一
ほんまに大丈夫なんか?
なんか、隠しとるんやないんか?
ハル
ハル
・・・!?
洋一
洋一
なんや
ハル
ハル
お前は、人の心配より自分のこと考えろや
果林
果林
ハルくん、明日は、早いでしょ?
わたし、もう少しいるから
ハル
ハル
サンキュー、果林。
ほな、しっかり治せよ
洋一
洋一
ハルも・・・気を付けろよ・・・
ハル
ハル
おう、おやすみ。お前は果林と仲直りしろよ?
洋一
洋一
えっ?
果林
果林
・・・・・
なぜか赤くなる俺と果林。
そう言って、病室から出ていったハル。

洋一
洋一
あ、あの・・・
仲直りするどころではなかったから・・・
果林
果林
あーあ、あのときのハルくん、見せたかったなぁ
洋一
洋一
えっ?
果林
果林
洋一が、倒れて、苦しそうにしてて・・・お医者さんに、
「あいつ、助かりますか?死にませんよね?」
そうやって必死に訴えてた
洋一
洋一
ただの風邪やのに大袈裟やな
果林
果林
ハルくん、小さいときにお父さんを肺炎で、亡くしたんですって。
洋一
洋一
えっ?
果林
果林
もし、大切な人が・・・・いなくなったら・・・・
朝、行ってきますって、いつものように送り出したおとんが・・・・そのまま・・・・
洋一
洋一
・・・・・
果林
果林
だから、無理してほしくなかったのよ
洋一
洋一
・・・・
果林
果林
だから、あんなに一生懸命、洋一のことを、お願いしていたのよ・・・
洋一
洋一
ハルらしいな・・・
静香
静香
それだけじゃないわ
果林
果林
洋一
洋一
えっ?静香さん?
静香
静香
こんにちは
突然、現れたハルの恋人、静香さん。

俺たちは、彼が・・・ハルが留学した本当の理由を知らなかった・・・・
彼女なか聞くまでは・・・・・
静香
静香
彼がなんで倒れたか理由をしってる?
洋一
洋一
えっ?
静香
静香
その様子だと、彼が留学した理由も聞いてないのね・・・・
ハルってばなにも話してないのね・・・・
洋一
洋一
留学って・・・・
音楽の勉強をしに行ったんちゃうんですか?
果林
果林
・・・・・・・
静香
静香
よっぽど、あなたたちに心配かけたくなかったのね
洋一
洋一
・・・・・・・
静香さんは話始めた。
彼との出会いや、留学の理由も・・・・
静香
静香
彼はね、喉の病気にかかっていたの
洋一
洋一
えっ?
果林
果林
・・・・・
静香
静香
もう、二度と歌えなくなるかもと言われて・・・・

だけどねアメリカに行けばいいお医者さん、たくさんいるって紹介を受けて・・・
一緒に行ったの
洋一
洋一
・・・・・
静香
静香
幼い頃、お父さんを、病気で亡くてるし、彼は、つらいことは、誰にも話さず頑張ったのよ。
きっとこの話は、ずっと話さないつもりだったかもよ?
頑張ったけど、毎日のように言っていたわ。早く、戻りたいって
洋一
洋一
・・・・・
静香
静香
必ず戻って、また、洋一さんや、みんなと歌うんだって
果林
果林
・・・・😭
静香
静香
絶望的だった、彼を救ったのは、あなたの声と歌だった
洋一
洋一
えっ?俺の歌と声?
静香
静香
そう。
あなたをスカウトしたとき、すでに彼は限界だった。
そして自分の喉の病気がばれないように、あなたをメインボーカルにしたの。
ハル
ハル
君は、メインボーカルや!
洋一
洋一
はじめから、俺を?
静香
静香
あなたたち二人といる居心地のよさを知ってしまった彼は、2年だけ待ってと・・・少しだけみんなと一緒にいたいって。もしも、死んでしまったら後悔するからって。
ハル
ハル
ええか?アイドルは、喉が命なんや
ただの風邪をなめるなよ?
洋一
洋一
俺、あいつの気持ちわかってへんかった
静香
静香
でも、彼は生きたいと思ったのよ
だから、あそこまで回復した。あなたたちと、出会ったから・・・・
洋一
洋一
あの・・・彼とはいつから・・・その・・・・
静香
静香
わたしは、彼が旅立つ前からの担当医よ
洋一
洋一
えっ?ってことは・・・・
果林
果林
知らないの、洋一だけだよ?
静香
静香
ねぇ、洋一君。あなたには同じ思いをしてほしくないのよ、きっと
あなたには歌っていてほしいのよ
それが、彼の願いなの
洋一
洋一
・・・・・
静香
静香
ハルはあなたのことを、兄弟みたいな友達だって言ってたから・・・・
洋一
洋一
ハル・・・・
果林
果林
明日、ハルくん、朝には来るから、一番に謝らなきゃね
洋一
洋一
うん。そうやな。
次の日、
洋一
洋一
ハル!おっはー
ハル
ハル
なんや、朝からハイテンションやな。なんかあるんか?
洋一
洋一
だって、今日の午後には退院やし、体なまっているんや!
ハル
ハル
はいはい。わかっとります。
洋一
洋一
あのさ、ハル
ハル
ハル
なんや。改まって
洋一
洋一
なんで、隠しとったんや。病気のことも、それから、彼女のことも。
ハル
ハル
彼女のことはともかく、話したらお前、俺のこと、病院送りするやろ
洋一
洋一
当たり前や!こっちがビックリしたんやからな!俺に偉そうなこと言って倒れて・・・・もしも・・・・
ハル
ハル
彼女は・・・静香は、俺の命の恩人なんや。彼女は、俺にとってかけがえのない人やし。話そうと思っても、お前、俺と果林をくっつけるのに一生懸命やし・・・
洋一
洋一
こないだ、わかってしもたわ。やっぱり、果林は、お前が好きなんやないかって
ハル
ハル
ふーん。そうや、こないだのこと、じっくり聞かせてもらおうか
洋一
洋一
えっ?!Σ( ̄□ ̄;)
ハル
ハル
あははは。うそやうそ。もう少し後で聞くわ。俺も今から検査やから
ハルは、病室から出ようとして、
洋一
洋一
ハル!
俺は思わず呼び止める。
ハル
ハル
ん?なんや?
洋一
洋一
おれは、死なへん。
だって、俺とお前は似たもん同士やろ?
ハル
ハル
なーんや、改まって
洋一
洋一
だから、心配するな。お前がつらいときは、フォローする。
ずっと歌い続ける・・・・
お前のために
ハル
ハル
俺のためやなくて、果林のために・・・やろ?
洋一
洋一
・・・と、とにかく辛かったら言うてくれよ
俺はお前の味方やから
絶対成功させような!ライブ
ハル
ハル
おう!
そのとき、一瞬だけ彼が泣きそうな顔をした気がした。

《ずっと歌い続ける》

これが、俺とハルの間に交わされたたったひとつの約束やったから・・・・・・

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