ガラララ
戸が開く音がした
まるで、昨日のことを忘れるかのように、いつもの果林に戻っていた・・・・
俺は、泣きそうな果林の頬に手を添えて・・・・
そう言った。
俺は、一輪の花を、果林に向けて・・・
(果林の章)
そんな洋一を見ていたら、余計に涙が出た・・・・・
そして、薬が効いたのか眠った洋一。
ねぇ?洋一、覚えてる?
私たちが、初めて・・・・
本当に初めて会った日のことを。
わたしも、洋一もとても小さくて、
そう、まだ、5歳のわたしと、洋一。
ケガして泣いている私に、小さな花を出して・・・
そう、言ってくれたよね
私覚えてるのに、洋一は、忘れちゃったんだね。
(洋一の章)
俺は、さっきと同じ夢を見ていた。
とても小さいときの夢。
なぜか、さっき、果林に花をあげたように、女の子に花をあげてなぐさめたことあったっけ?
その女の子は、果林に似ている。
なんでやろう。
ず~っと、会いたかった女の子なんだろうか。
熱でボ~っとしていてその女の子の顔がよく見えやんかった。
なぜだか、無理しちゃうところ・・・・
小鳥のさえずりが、聞こえてきた。
えっ?朝?
少し朝日が差し込んで眩しく感じる・・・・
俺は、ベッドの上にいる?
誰かいる.・・・
果林??
俺は、ビックリして、ガバッと跳ね起きた
頭がくらくらしてまだ、整理がつかない
そういうと、部屋から出ていったハル。
でも、俺は約束を守れなかった
そこへ、血相を変えたハルが大きな声を出して病室に入ってきた。
すごく怒ってる?
尋常じゃない彼の怒った顔・・・・
ハルは、踵を捨てて、病室から出てってしもた。
果林はそのあとを追いかけていった。
でも、俺には二人を追いかけれやんかった。
俺はただ見てることしかできやんかった。
二人の会話を聞いてしまった訳やないけど・・・・。
やっぱり、果林は、あいつのことを・・・・
そう思ってしまうんや」・・・」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!