第6話

27
2019/10/21 11:24
10年前の、高2の夏休み。
俺は、久しぶりに祖父の家に遊びに来た。
いつもの公園で、一人、ギターを弾きながら歌を歌っていた。
そう、この公園は、亡き妻、果林と初めて出会った場所やった。
俺は、昔からよくこの公園に遊びに来てた。
祖父がたてた公園で、祖父は、俺の夢を応援してくれとったから、好きに使っていいと、俺が唯一歌える場所やった。
俺は、歌に夢中になっとって、目の前の人の姿に気づいてへんかった。
その人は、静かに聞いてくれていたから・・・・

他の人は、子供たちの面倒でいっぱいなのに、その人だけは、歌を聞いてくれとった。
たった一人、歌を聞いてくれた人・・・・

俺は、少しその人の視線に気づきながらも、最後まで歌おうと、思った。
果林
果林
ねぇ?君って、ミュージシャン?
洋一
洋一
えっ?
急に呼び止められて、俺は、演奏を止める。
目の前にいたのは、女子高生・・・
それが果林だった。
これが、俺と果林の出会いだった。
果林
果林
もしかして、今流行りの、ストリートミュージシャンってやつ?そこから、プロになる人、いるよね
洋一
洋一
いや。俺は大阪から遊びに来とるただの高校生や
果林
果林
ふーん。でも、ミュージシャンっぽいね。
曲も、とても素人が作ったように思えないわ。
自分で、作ったの?
洋一
洋一
一応
果林
果林
でも、ここって・・・
洋一
洋一
ここは、じいちゃんの公園やから。
果林
果林
おじいさんの・・・・
洋一
洋一
許可はもろとる。だから、自由に歌えるんや。俺は、いつかプロになるためにここにいるんや
果林
果林
えっ?一人で?
洋一
洋一
そりゃあ、仲間を呼んで、バンド組めたら一番ええけど、そんな簡単には世の中いかへんし、それに・・・
果林
果林
それに?
洋一
洋一
いや、なんで君にこんなこと話してるんやろう。しかも、初めておうたのに。
果林
果林
初めて・・・
でも、初対面なはずやのになぜだか懐かしく感じるんや
洋一
洋一
俺さ、東京の大学受けようと思ってるんや
果林
果林
へぇー
俺は、なんかわからんけど、彼女にどんどん話していく
果林
果林
じゃあさ、また会うよね?わたしたち
洋一
洋一
えっ?
果林
果林
ここね、私がすんでるマンションの近くなの
洋一
洋一
へぇー
果林
果林
あなたがもし、この近くの大学を受けるなら、きっと会えるわ
洋一
洋一
まさか
果林
果林
フフフ、冗談よ
洋一
洋一
・・・・・
俺は、彼女のペースにはまりかけてる
果林
果林
バンドを組みたい・・・
それが、あなたの夢なのね
洋一
洋一
あっ、そうや。まだ、名前言うてへんかったな。
俺の名前は、多田洋一。17歳。
君は?
果林
果林
私は、桐島果林。あなたと同じ17歳、高校2年生よ。

じゃあ、また、会えることを願って・・・
洋一
洋一
うん・・・
俺は、彼女の言葉を信じたんかもしれやん
まさかと思いながらも・・・・
そして彼女が、やがて大切な存在になるなんて思ってもいなかった。

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