果林の章
洋一、あなたは優しかったね。
子供のときもそうだった。
怪我して泣いてたわたしを、元気づけるるために、花をくれた。
子供ながらも、ちゃんと女の子の気持ちがわかる、優しい人だった。
あたしね、嬉しかったんだよ?
あなたに・・・
洋一にあえて・・・、同じ大学に入れて・・・
彼はわたしを、覚えていなかったみたい・・・
わたしとの出会いが2回目だってこと。
でも、優しいところは、変わらなかった。
照れ屋で、不器用で一途なまま、大きくなった。
彼といると安心できたの。
嫌なことも忘れられる。
わたし、やっとわかったんだ。
わたしにとって、必要な人は、洋一なのかもしれないって。
振り向けば、彼がいたからわたし、乗り越えられたの。
辛いことも、悲しいことも、うれしいことも・・・・楽しいことも・・・
全部一緒に乗り越えてきたの・・・
やっと気づいたのに・・・・
3年生の秋やった。
俺と果林は、あの公園に行き、歌を歌ってた。
ハルからの手紙は、春から途絶えていた。
そして、バンド活動も順調で、来年の春に、初ライブが、決定していた時やった。
ん?聞いたことある声・・・と、シチュエーション・・・・まさか・・・
あのときと同じ台詞!
やっぱり!
果林がまた、泣きそうな顔でいる。
二人の様子を見て、俺は、守る役目は終わった
果林は嬉しくて泣いている
彼は、迷わず果林の頭をよしよししてる。
今度は俺一人やった。
そのときに、悲しそうな顔をした果林に、気づかずにいた俺・・・
だけど、それに、気づいていたんは、ハルの方で・・・・
ふたりは、こそこそと話している
果林は、家に一旦帰ってしもた。
俺は、逃げたかったんかもしれやん。
あいつら二人を見るのが辛かったから。
それから俺たち3人は、忙しい日々が続いてなかなか一緒におれやんかった。
時々果林が、ハルと何かを話しているのを目にした。
俺は、もう二人の間に入らんことにした。
そんなある日のことやった。
すごく、綺麗な人・・・・
その静香と言う人は、迷わずハルにキスをする・・・
衝撃過ぎて何も言えやんかった。
無論、果林も、思わず立ち上がる
俺は、すぐ、果林を、追いかけた
その頃、楽屋では
なぜだか泣こうとしない果林
このときから、果林の気持ちは、他の方向いてたなんて、気づいてもいなかった。
果林の気持ちは、ずっとハルに向いてるって、俺は、思い込んでいたから。
バシッと、叩かれた。
痛いんやけど。
わたし、へんだ。
彼に好きな人がいるって聞いただけで胸が痛いなんて・・・・
どうしてだか涙が止まらなかった。
でもハルくんは、それを察するかのように、笑っていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。