きっと俺はカタールのことが好きなんだろう。
こんな事を言っている自分が情けなくて情けなくて仕方がない。
だってカタールは面倒で釣れないやつでどんくさくて……なにせ男だから。
散々同性愛を嫌っておいて男に恋するなんて……
心底自分が嫌になる。
いつからだろうか?
カタールのことで胸がざわつくようになったのは。
【回想】
誰に対しても冷たく
まるでゴミを見るような目で。
今まで何不自由なく欲しいものは何でも手に入れてきた。
どんなに高価なものでも、
たとえ非売品であろうとも……企業ごと買収してしまえば済む話。
でも、あいつは………カタールは違った。
俺がどんなに手を伸ばしても…
何を言おうと届かない。
まるでカタールが、俺より何倍も上の場所にいるかのように感じた。
これは……ある日のこと。
何でもない日になるはずだったの日のことだ。
カタールは相変わらずの冷たい口調で俺の視線を跳ね除ける。
ああ、わかった。
俺はわかったさ。全部、全部わかった。
手を伸ばしても届かないのなら…
ダンッ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!