第4話

3枚目
193
2018/04/02 11:26
今いる場所は、映画館らしかった。

前方のスクリーンにあの有名な小さな名探偵が映っていて、テンションが上がった。

そう、私はこのシリーズが大好きなんだ。
行人
くすっ
小さな笑みが聞こえて左を見る。

どうやら、今回一緒なのは行人という名前の人のようだ。

……この人……絶対私より年上だよね。私が昔敬語使ってたっぽい発言をこの人してたし、間違いなさそう。

でも20はいってない……気がする。雰囲気はそのくらいだけど。じゃあ、先輩?とか?
あなた

なに?行人先輩

行人
いや、あなたがあんまりにも楽しそうだからさ。映画より君を見てしまいそうだ
あなた

なっ……!?

呼び方が合っていてホッとしたのもつかの間、いきなり口説かれて頬が熱を帯びる。

反応に困って下を向けば、椅子の肘置きに置いていた手を不意に握られた。

驚いている間に恋人繋ぎの完成。……じゃないよ!?
あなた

はっ、離しっ……

行人
あなた、しー
手を繋いでいない左手で行人先輩が無言を促してくる。

誰のせいで喋ったと……!

しかし、まだ映画は終わっていないので、文句も我慢して飲み込む。手は依然として繋がれたままだ。
あなた

早く映画終わって……!

その後の映画の内容は全く憶えていない。



◇◆◇◆


行人
いやー楽しかったね
あなた

……そうだね

ドキドキしすぎて楽しむ余裕なかったけど……。

はは、と乾いた笑いを零す。そして、行人先輩を横目で盗み見た。

サラサラの綺麗な黒髪。黒縁のメガネがとても似合っていて、顔立ちは間違いなく整っている。

落ち着いて見てみると、相当かっこいい人だな。なんか、雑誌の表紙とか飾ってそう。
行人
次はどこに行こうか。行きたいところある?
あなた

あー……っていうか、私たち部の備品を買いに来たんじゃなかったっけ!?なんで普通に遊んでるの!?

不思議な感覚だった。

話していたら勝手にいろんなエピソードがぽんぽん出てくる。記憶を取り戻している証拠だろうか。
あなた

そうだよ、部長に怒られる!ちゃんと買おう!今から!

行人
まあまあ、後でも買えるから。最終的に揃えれば大丈夫
あなた

あー言い方間違えた、そうじゃなくて

行人
分かってる。遊ぶこと自体がいけないんじゃないかってことでしょ?
でもオレは、あなたともう少しデート気分でいたいから……まだ買い物はしたくないな
あなた

なっ、にを……

行人
ねぇ、あなた――


新しい扉の錠前が落ちた。

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