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第20話

とぅえんてぃー
5月24日。くもり。





今日は何故か、夏樹の家にいる。
桜島 夏樹
『麦茶持ってくるねー』
僕がこくりと頷くと、夏樹は部屋を出て行った。
西風 柚希
...
ここは、夏樹の部屋。

さほど可愛げがある部屋でもなければ、ボーイッシュな部屋でもない、普通の部屋だ。


僕は辺りを見回す。

すると、机の上に置かれた紙に目が止まった。



『診断書』

そう、書いてある。



そういえば、夏樹は何で聴覚障害を持っているんだろう...




僕はそう思いながら、その診断書を読んだ。

いけないことだとは分かっていたが、手が勝手に動いた。





















そこには、こう書いてあった。



《 転換性障害てんかんせいしょうがい 》

西風 柚希
転換性...?
その病名に続けて、下に説明があった。



《 転換性障害は、葛藤やストレスといった心理的要因が、身体症状として身体の領域に転換されているという意味でこう呼ばれている。表現を変えると、身体には何の問題もないのに、随意運動機能や感覚機能に異常をきたす障害。

アメリカ精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-Ⅳ-TR」には、心の苦悩が身体の症状に表現されているという意味の「身体表現性障害」という診断があり、転換性障害はこの身体表現性障害の中に分類されている。


桜島夏樹さんの場合、葛藤なストレスと「何も聞きたくない」という強い意志から、聴覚障害を引き起こしたとされる。 》




西風 柚希
「何も聞きたくない」....?
どういうことだ?

夏樹は、ただの聴覚障害じゃなくて...




───────あれ?

そういえば、夏樹の家には誰もいないのか?

前に来たときもいなかった。



すると、部屋の扉が開く音がした。
桜島 夏樹
『お待たせー』
僕はとっさに、診断書を隠す。
桜島 夏樹
『ん?どーした?』
西風 柚希
『いや、何でもない』
西風 柚希
...
西風 柚希
『そういえばさ、夏樹の親って...』
すると、夏樹の肩がビクッと揺れる。
桜島 夏樹
『お父さんは、病死したよ』
お父さん...?
西風 柚希
『母親は?』
すると、夏樹は机の上を見て、何かを悟ったように僕を見た。
桜島 夏樹
『見たんだね』
僕はためらいながらも、頷いた。
桜島 夏樹
...
桜島 夏樹
『お母さんは、殺されたよ』
......は?
桜島 夏樹
『私がまだ、小学生のとき』
桜島 夏樹
『8年前の、大虐殺事件知ってる?』
8年前の、大虐殺事件。

確か、デパートにいた何万人の人が、暴力団によって無惨な死を遂げたっていう...
桜島 夏樹
『私ね、そのデパートにいたんだ』
西風 柚希
....は?
桜島 夏樹
『お母さんと一緒にね』



















それから、夏樹は昔話を始めた。


夏樹はずっと笑っている。

絶望を抱えた、そんな目で。