8月31日。快晴。
海水浴には、良い天気だ。
夏樹は、幼い子供のように海辺を走り回って
はしゃいだ。
夏休みの最後だというのに、人が沢山いた。
特にカップルが目立っている。
...僕らも、カップルに見えたりするのかな?
すると夏樹は、少し面倒くさそうに僕の腕を
引っ張った。
夏樹の水着は、あまり肌をさらさないやつだったが
フリルなどが付いていて、女の子らしかった。
可愛くないと言ったら嘘になる。
何故か、急に顔が熱くなった。
夏樹はそんな僕を見てニヤニヤしている。
顔が熱い。
滅多にこんなこと言わないからな...
こんな恥ずかしいとは思わなかった。
夏樹はそう言いながらにんまり笑う。
僕はその場から逃げるように、飲み物を買いに
行った。
数分後...
飲み物を買いに行き、夏樹の所へ帰ってきたは
いいんだけど...
夏樹が絡まれてる。
夏樹は喋れないから、首を横に振るだけだ。
絡んでくる男はそれを知らない。
邪魔。
それをオブラートに包んでやったんだ。
早く退け。まじで邪魔。
あ、そういえば僕、低身長で童顔....って、そんな
ことはどうでも良い。
男はそう言うだけで、夏樹の腕を掴む手を
放そうとはしない。
...よく見れば、夏樹は震えている。
売ってんのはどっちだよ。
はぁ...本当、面倒くさい。
まじで面倒くさい。
僕は、男の脛を踵で思いっきり蹴る。
そして、僕は無言で夏樹を男から引き剥がし
腕を引っ張った。
数分後。
僕らは人気の少ない海辺を歩いていた。
すると、夏樹は僕の手をぎゅっと掴んだ。
通り魔の時も、そうだった。
夏樹は、不安な時、怖かった時、人に触れたがる
のかもしれない。
そうしたら、安心できるから。怖くなくなるから。
僕は、無言で夏樹の頭を撫でた。
ただ、夏樹の不安や恐怖を和らげたかっただけ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。