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第10話

てん
11月10日。雨。







文化祭だ。
クラスメイト
そっちの衣装ここに持ってきてー!
クラスメイト
おーけー!こっちよろしく!
クラスメイト
まかせとけ!
劇が行われる体育館の舞台裏が、小道具や衣装で
埋め尽くされる。
西風 柚希
はぁ...
文化祭って、何でこう面倒くさいのだろう。


本当は仮病でも使って休みたいんだけど、僕の
クラスの出し物は“演劇”だ。

一人でも欠ければ成り立たない。

僕が休んだらナレーション係がいなくなる。


本当、何で演劇なんだろう。
クラスメイト
もうすぐ開場だよー!
クラスメイト
照明落としてー!
クラスメイト
本番ふぁいと!!
クラスメイト
おー!
はぁ...

帰りたい。





















開場すると同時に、沢山の人がぞろぞろと体育館に
入ってきた。
観客
劇、何やるんだっけ?
観客
確か「時をかける少女」だよね!
観客
へぇー!面白そう!
観客
楽しみー!
観客が期待を膨らませる。

やめてくれ。ハードルが上がる。
クラスメイト
西風くん!出番だよ!
僕は黙って頷く。






ぱっと、辺りが暗くなる。


僕はしっかりと息を吸って、舞台に上がった。
西風 柚希
〔この度は、雨の中、3年A組
「時をかける少女」の上演にお越し
いただき、誠にありがとう
ございます。〕
僕にスポットライトが当たる。
西風 柚希
〔クラス全員で協力し合い、ここまで
きました。どうぞ、楽しんでいって
ください。〕
マイクが僕の声を吸い込むように取り、大きく
放つ。
西風 柚希
〔それでは。〕
西風 柚希
〔皆さんを“時の世界”に
      案内いたしましょう。〕






















僕はこれからずっと、舞台の横にいる。


ナレーションだからだ。





面倒くさい。
クラスメイト
〔タイム・リープ⁉〕
クラスメイト
〔そう。その可能性が高い。〕
クラスメイト
〔テレポーテーションの
可能性もある。〕
クラスメイト
〔知らなかった...〕
クラスメイト
〔あの事件の真相を知る為には、
君にタイム・リープをして
もらいたい。〕
クラスメイト
〔えっ⁉先生!和子に
タイム・リープをしろと言うん
ですか⁉〕
クラスメイト
〔ああ。そうだ。4日前に戻って
事件の真相を知るんだ。〕
クラスメイト
〔そんな、私に出来るかな...〕
クラスメイト
〔出来るよ!頑張って!和子!〕
クラスメイト
〔一夫...〕
西風 柚希
〔こうして、和子は4日前の
理科室にタイム・リープをした。〕
はぁ...

早く終わらないかな...


















やっと、劇の終盤になった。
クラスメイト
〔そんな..一夫が未来人だった
なんて...〕
クラスメイト
〔黙っててごめん。〕
西風 柚希
〔和子は思った。今までの1ヶ月、
つまり未来から一夫が来た時から
彼に好意を抱いたのは確かだ、と。〕
あれ...?

役者の容態がおかしい...
クラスメイト
〔僕は..こ..の...世界の...
ラベン..ダーを...〕
駄目だ。あいつ、顔が赤い。高熱だ。


しょうがないな...
西風 柚希
〔ラベンダーを未来に持って
帰りたい。〕
僕はクラスメイトを支えながら、クラスメイトの
台詞を口にした。

開場中に、どよめきが生じる。
観客
あれ?あの役者さん、ふらふら
してる?
観客
あのナレーション、凄いね!
人の台詞を覚えてるよ!
観客
しかも演技力半端ない...
観客
なんか美形だし...
主役のクラスメイトは一瞬だけ目を丸くしていたが

「選手交替」

と僕が目線で語ったら、こくりと頷いて演技を
再開した。


高熱のクラスメイトは、ふらふらしながら舞台を
下りた。
クラスメイト
〔うん。良いよ。〕
クラスメイト
〔私のラベンダー、あげる。〕
西風 柚希
〔ありがとう。〕
クラスメイト
〔でも約束。
絶対、私に会いに来て。〕
西風 柚希
〔...分かった。約束するよ。〕
クラスメイト
〔ふふっ。そんな顔しないで?〕
西風 柚希
〔だって..君があまりにも
優しすぎるから...〕
クラスメイト
〔...〕
西風 柚希
〔ど、どうしたの⁉〕
西風 柚希
〔どうして泣いて...〕
西風 柚希
〔...〕
僕は脚本通り、主役の涙を人差し指で拭う。
西風 柚希
〔また、会いに来るよ。〕
西風 柚希
〔じゃあね。和子。〕
脚本通り、優しく微笑む。
観客
え、やば。惚れた。
観客
しっ!今良いところ!
クラスメイト
〔うん...また、いつか。〕
西風 柚希
〔ん。元気でいないと怒るからな。〕
クラスメイト
〔ふふっ。一夫らしいね。〕
クラスメイト
〔さようなら..一夫...〕



















こうして、“主人公”は

       “大切な人”と涙の別れをしました。



















主人公は今も、あなたを思っています__________。