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第4話

ふぉー
桜島 夏樹
『西風くんは、どうして
ここにいるの?』
桜島さんがメモ帳を僕に見せる。

僕は、差し出されたメモ帳とペンを受け取ると、
西風 柚希
『別に。』
と書いて桜島さんに返した。

すると、桜島さんは「そっけないなー」という
ような顔をした。
西風 柚希
そっけなくて悪かったね。
俺は、聞こえるハズがないと思ってそう口にすると
桜島さんがメモ帳に何かを書き始めた。
桜島 夏樹
『意外と毒舌だね。西風くん。』
桜島 夏樹
『口の動きで分かっちゃった。』
桜島 夏樹
『あ、あと、私の思ってること
よく分かったね。』
口の動きで分かるよのかよ...
桜島 夏樹
『そうだ!』
...?
桜島 夏樹
『君、私の通訳になってよ。』
西風 柚希
は...?
驚きの言葉に、つい声がもれてしまった。

聞こえてないだろうか。

と一瞬思ったけど、聞こえないんだった。
桜島 夏樹
『あはは。
「何で?」って顔してる。』
いや、だって...
桜島 夏樹
『君なら私の気持ちを
分かってくれる気がするんだ。』
「分かってくれる」


人はその言葉が大好きだ。


分かってくれると嬉しくて、楽しい...らしい。

僕のことを分かってくれる人なんていなかった
から、そんなの分からない。

そもそも、分かってほしいなんて思ってないけど。


人はやっぱり、自分を分かってほしいんだろう。
西風 柚希
...
僕は何もしなかった。表情も変えてない。


この人は、“僕”に分かってほしいなんて思っちゃ
いない。

“誰でも良い”から、分かってほしいんだ。


聴覚を失い、会話が出来なくなった自分を。
桜島 夏樹
『それに...』
桜島 夏樹
『あと、1年だから。』


















あと、1年。























そう。この世界はあと1年で終わる。

昨日から世間が騒ぎ出した。


「巨大な彗星が地球に直撃する」と。


1年後、その巨大な彗星は地球に直撃し、地球ごと
消滅する。

何かの専門家がそう言ってるんだ。間違いはない。


まだ、デマだと思っている人もいるらしいが
大体の人はその事実を信じている。




















だから何だ。


















だから何だって言うんだ。


今まで通り人生を送るしかすることが
ないじゃないか。


今朝、ホームルームで担任が言った。


「残り少ない青春を、おもいっきり楽しめ。」


青春を楽しめ?

どうやれば良いんだよ。


勉強をせずに遊ぶのか?

学校に行かず遊ぶのか?

1年しかない恋愛ごっこで遊ぶのか?


意味が分からない。


そんなこと、自分勝手にも程がある。


残り少ない?


だから何だよ。



















今まで通り、人生を送れば良いじゃないか。



















桜島 夏樹
『駄目、かな...?』
僕は、生徒手帳とペンを胸ポケットから
取りだした。

そして、
西風 柚希
『良いよ。』
と書き、桜島さんに見せる。

桜島さんは嬉しそうに笑った。
西風 柚希
『けど、僕は今まで通り
人生を送る。』
桜島 夏樹
...?
西風 柚希
『特別なことはしない
っていう意味だ。』
桜島さんは納得したように、首を縦に振る。
桜島 夏樹
『私も、そっちの方が良いと思う。』
桜島 夏樹
『まぁ、今思ったばかりだけど。』
桜島さんは、その言葉を僕に見せて苦笑した。
桜島 夏樹
『宜しくね。柚希。』
西風 柚希
『いきなりその呼び名...?』
桜島 夏樹
『うん。そっちの方が色々と
やりやすい。』
桜島 夏樹
『私のことも、“夏樹”って呼んで。』
はぁ...
西風 柚希
『分かったよ。夏樹。』
僕がその言葉を見せると夏樹は、僕が見た中で
一番の笑顔を浮かべた。

...通訳、か。