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第21話

とぅえんてぃーわん
桜島 夏樹
『凄かった、本当に』
桜島 夏樹
『ドミノみたいに、どんどん人が倒れてくんだもん』
桜島 夏樹
『一面血でいっぱいで、壁までも赤黒かった』
桜島 夏樹
『弾丸が飛び交って、まるで戦争だったよ』
桜島 夏樹
『でも、皆は「もうすぐ助けが来る」ってずっと耐えてた』
桜島 夏樹
『なのに、警察が来たのは事件の四時間後』
桜島 夏樹
『そんな時間に来たら、勿論全滅だよ』
桜島 夏樹
『私は血まみれのお母さんに抱きかかえられて、見えなかったんだろうね』
桜島 夏樹
『殺されなかったよ』
桜島 夏樹
『でも、殺された方がマシだったかも』
桜島 夏樹
『周りから、叫び声、悲鳴、銃の音、血が飛び散る音、沢山の足音』
桜島 夏樹
『もう、何も聞きたくないと思った』
桜島 夏樹
『それで、気付いたら病院』
桜島 夏樹
『目覚めた時にはもう、お母さんは死んでて生き残ったのは私一人だった』
桜島 夏樹
『お父さんは、お母さんが死んだショックで病気にかかって、呆気なく死んでったよ』
桜島 夏樹
『家族の死を告げられた私は思った』
桜島 夏樹
『「もう二度と、声を、音を、何もかも聞きたくない」』
桜島 夏樹
『それで、気付いたら聴覚障害者になってたってわけ』
桜島 夏樹
『.....これで、良い?』
夏樹は、自嘲しながら僕に尋ねた。





夏樹が抱えていたのは「辛い過去」とかそんなレベルじゃなかった。


夏樹の両手は、小刻みに震えていた。




無理も無い。


自分の過去を思い出しただけじゃなく、語ったのだから。
西風 柚希
...
言葉が出ない。


「頑張ったな」とか「もう大丈夫」なんて、とっくに言われてるハズだ。

もう、そんな言葉じゃ夏樹は揺らがない。





















だったら──────────







桜島 夏樹
!?
僕は夏樹の腕を掴み、引き寄せた。

そして強く抱き締めると、卵を温めるように優しく頭を撫でる。




言葉が出ないなら、行動だ。


心強い言葉をかけてやれないなら、強く抱き締めれば良い。

優しい言葉をかけてやれないなら、優しく頭を撫でれば良い。


それならきっと、伝わる。
桜島 夏樹
...
すると夏樹は、僕の服を掴んで震えながら泣き始めた。

僕はそんな夏樹の頭を、ずっと撫でる。






















桜島 夏樹
『ごめんね、取り乱しちゃって』
夏樹が泣き終わった後、僕は帰ることになった。
西風 柚希
『大丈夫。というか、本当に泊まらなくて良かったの?』
桜島 夏樹
『うん、いいの。もう充分だよ』
夏樹は赤く腫れた目で、何かが吹っ切れたような爽やかな笑顔を見せた。
西風 柚希
『そうか、それなら良かった』
僕も、笑ってみせる。
桜島 夏樹
『うん、じゃあね、柚希』
僕はこくりと頷いてから、玄関を出た。










帰り際に、「好きだよ」なんて言ったのは秘密である。

夏樹には、聞こえてないだろうから。