おはよう、朝一番に声をかけてきたのは涼介くんだった。
涼介くんから声かけてくるなんてめずらしいな、
って思いながら一緒に食事部屋へ向かった。
昨日の出来事は2人には言っていない。
ていうか、言えるわけないよね。
大貴くんは私のひじの辺りを見ながらそう聞いた。
この傷は転んだときに擦りむいたものだ。
そっか、と大貴くんは納得してくれたみたい。
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今日も学校に着いた。
昨日のこともあって少し緊張している。
慧くんと涼介くんは車を降りると先に行ってしまった。
私は大貴くんと2人きりになった。
私の様子が変なのに気がついた大貴くんが
尋ねてきた。
大貴くんは少しの間私をみつめてからこう言った。
大貴くん、ほんとに優しすぎる。
でも、大貴くんと一緒にいてまたあんなことされたら...
そう思ったら涙がこみ上げてきた。
大貴くんの前で泣くわけにはいかない...
大貴くんは私の腕を掴み、学校とは反対の方向に私を連れて行く。
大貴くんは黙ったまま。
少しすると学校の近くの公園に着いた。
思わず えっ と声が漏れた。
なんで、なんで全部わかるの___?
わかってくれてる人がいるってだけで嬉しくて。
また涙が出てくる。
涙が溢れて大貴くんの顔がぼやける。
大貴くんはそのまま私に近づいて背中に手を回した。
大貴くんの温もりが私を包む。
ずっとこのままでいたいって思ったのは
気のせいかな。
もう少し、大貴くんの優しさに甘えていたくて。
私も大貴くんの背中に手を回した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。