轟くんがその場から去るのを見送った後、私は何か大切なものを忘れている感覚に陥った
…私の個性は時空間。これは親譲りの個性。
そして問題はここから、今まで考えないようにしてきたこと。
それは
個性を医師から聞いた記憶が無いということ。
本来なら4歳に個性が発覚する時本人と保護者が直接話を聞く。みんなはその時の記憶は鮮明に残っているらしい。ただ私にはその記憶が一切ない。
まぁ、もっと言えば6歳からの記憶しか残ってはいない。1度小学中学年の頃にお母さんに聞いたことがあった。
「ねぇねぇお母さん!」
お母さん「なぁに?あなた」
「あなたね、ちっちゃい頃のことぜーーんぜん思い出せないの!どうしてー?」
お母さん「…」
この時幼き頃の私でも気づくぐらいお母さんの顔は一瞬曇った。
お母さん「それはね、あなたが今、すごく楽しいからよ」
微笑んで言うお母さんに表情が曇った時の不信感は1ミリも残さず消えた。
だけど今再び考え直すとおかしい事が多すぎる。
もしも、お母さんが何かを隠しているとしたら?
もしも、私がもっと大切な何かを忘れているとしたら?
…考えても考えても答えは見つからない。
そして、それよりももっと気になること
『個性の誤り』
昔1度あったらしい。診断された個性とは異なるものが個性だったという事例。もしかしたら私もそれなのだろうか。
今度、もう1度個性の診察に行こう。
ミッドナイト《勝者!爆豪くん!!!》
「えっ…」
考え事をして周りからの情報をシャットアウトしていたのか、意識を戻した時には既に麗日さんと爆豪くんの試合が終わっていた。
「やらかした…。」
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!