全校生徒が集まる体育館で校長先生の声だけが響いている。寝ている生徒、隠れてお喋りをする生徒、一生懸命に校長先生の話を聞く生徒、様々だった。
私が休んでいる間に卒業式で別れの言葉を言う人を誰にするかという話し合いが行われたそうだ。当たり前だが自分から進んで言いたいという生徒はおらず、毎年テストで上位にいる生徒が言うのが恒例となっていた。
さすがに1番ではないが、テストで10位以内には入っていた私はみんなからの推薦を受け別れの言葉を言う人になってしまった。もしかしたら自分が言いたくないという思いからなのかも知れないけれど…。
返事をしてステージに上がる。マイクの前に立って原稿を読み進めた。
『キー』
上から変な音が聞こえる。しかし別れの言葉の最中に上を向くことは出来なかった。
『キーー、キーー、ガチャン!!』
梅瑠の声が初めに聞こえ、最後に聞いたのはクラスメイトや先生達の悲鳴だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!