第10話

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2019/08/10 13:42
彰人の言葉に、いちいち揺られる。
話さない、という自分の頑なな決意さえ、いとも簡単に。


「…お前は、俺のことなんか、どうでもいいのかよ。」


話さなきゃ、という気持ちと、話しちゃダメだ、という気持ちが双方あって、どっちにも動けない俺を見て、
彰人は怒った、というよりも傷付いた顔をした。


(違ぇ、そんなんじゃねぇよ…)


俺だって、彰人のことは大切だ。
きっと、こんな俺とずっと親友でいてくれた唯一無二の存在だと思う。

でも、だからなんだよ。


「…分かったよ。お前が、そういうことなら。」
「彰人っ…、」


ダメだ、やっぱり。
これ以上、親友の傷付いた顔は、見ていられない。


何を思われても構わないから、とりあえず、話さないと。


「やっぱ俺、彰人に話ある。…だから、これで最後でも良いから、付き合えよ。」
「…バーカ、だったら最初からそう言えよ。」


ふ、と笑う彰人は、いつの間にか、いつも通りに戻ってて。
そんな彰人を見たら、俺も肩の力が抜けて、ホッとした。


…そして俺は、彰人に全てを話した。
余命はあとわずかだということ、学校に通えるのはもう、1ヶ月をきっていること。

山口に告白したのも、そういった背景、そして、
俺が山口をずっと好きで、最後くらい、彼女といたい、とう想いがあるから、ということ。


「…驚くよな、こんな話。」
「あぁ。さすがに、平然として聞いてはいられねーよ。でも…、話してくれてありがとな。」


礼を言うのは、こっちの方なのに。
そんなことを思いながら俺は、彰人の横顔を見る。


「…遅刻、したな。」
「あぁ。」


話をしていたら、とっくに登校の時間は過ぎていて、完全な遅刻だ。
それでも俺らは、不思議と穏やかな気持ちのまま、教室へと向かった。

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