第20話
からかいのつもり
指されたコップからは
淹れたてなのか白い湯気が延々とたつ
中身が何なのかは分からないけど
気にせずにコップに口をつけた
思ったよりも熱い飲み物に
フーフーと冷ましてからもう一度口をつける
あっ、
優しい甘さが口の中に広がってほっとする
ぼーっとしながら飲んでいると
気づけばコップの中が空になっていた
コトッとコップをテーブルに置いて
またぼっーとし始める
あの3人はどこ行ったのかな
帰ったとか??
まぁ考えてもわかんないから
マサイがでたら聞けばいっか
うぅ…やばい
また眠くなってきた…
睡魔にはどうしても勝てない
いつもなら諦めて寝ちゃうけど
髪もまだ濡れたまま
さすがにこのまま寝るのはダメだと思って
何度も閉じようとする重いまぶたと必死に戦う
んん?
意外と出てくるの早いね?
まだ30分も経ってないのに
まぁそんなことはどうでもよくて
お風呂からあがったマサイの声で 眠気が少しとれる
いつもなら睡眠妨害だと思っていたけど
今回だけはよくやったと思う←
寝ぼけていたとしても
余計な一言を言ったのを私は聞き逃さない
私の反論を適当に流してドライヤーを取りに行く
マサイにちょっと負けた感じがして
なんとも言えない気持ちになる
私のどこが女の子らしくないって言うのさ
まったく…
これでも現役JKですよ???
戻ってきたマサイはどかっと床に座って
自分の髪を乾かそうとする
いやぁ…
乾かすのめんどくさいなぁ…
うーん…
あっ、
マサイを見てたら思った
お願いしたら乾かしてもらえるんじゃないかって
からかうのも含めてお願いしてみたくなった
そうとなったらさっそく行動するのみ
マサイは乾かそうとする手を止めて私を見る
どんなに反応するのかな
分かりやすく驚くその姿に笑ってしまう
えっ黙っちゃったよ
話しかけてみても返事がなくて不安になる
もしかしてからかったから怒ったのかな
でもそんな人じゃないはず…
しばらく続く無言タイム
謝った方がいいのかな…
いや謝んなきゃだよね
よしっ…
謝ろうとしたとき
マサイはそう言って自分の足と足と間を指した
ほんとによくかぶせてくるなぁ…
予想外の言葉に間抜けな声が漏れる
しばらく固まっている私にもどかしくなったのか
少し大きな声をあげてそう言った
冗談で言ったのに(半分本気)なんて言えなくて
言われるがままにマサイの足と足の間に座る
とりあえず怒ってなかったんだ
よかったぁ…
いや勢いでお願いしちゃったけど
これ恥ずかしいね…
乾かしてもらうだけなのに変に緊張する
ドライヤーがブォォォォンと音をたてると同時に
マサイの指が濡れた髪をすく
…なんか
話している途中にふと思った
…なんか忘れている気がする
あっ、そうだ
あぁだからいなかったのね
いつもどうりのくだらない会話がしばらく続いて
気づけば髪も乾き終わりに近づいていた
ふわっと香るシャンプーに
心が落ち着く
乾かしてもらっているだけなのに
少しドキドキとするのは
なぜなのかわかんないけど
今すごく幸せに感じた
✁ ✃ ✁ ✃ ✁ ✃ ✁ ✃
アデュー!!