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第6話

5.9割の幸福と1割の違和感。
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2023/11/13 13:56
~いるまside~


いるま
はっ…はっ……
息を切らしながら走る。

いるま
……らんっ…!


はあく、はやく……!






らん……!




1か月、何も連絡がなかった。




それも前触れなく。


何も、言わずに。



全力で探した。それでも、見つからなかった。



シクフォニの活動は一旦休止になった。


…続けようとした。だが、いざ取り組もうとしても、手を動かせなかった。



どんな歌みたを作っても、企画をやっても、会議をしても。


…どこか、足りない。欠けている。



そんな感覚が強かった。


…らんがいないだけで、こうなってしまうのかと。



他のメンバーもそうだったみたいで、俺らは一旦シクフォニから離れた。


それでも、ディスコでの会議はやめなかった。






らんが、いつ帰ってもいいように。





そう信じて、1か月待った。






…『LANは死んだんじゃないか。』







あまりの浮上のしなさに、そういうリスナーまで現れた。



それを見たときは、思わずスマホをぶん投げちまった。



…それでも、もしかしたらそうなのかもしれない、と。




そう不安になってしまっている俺もいた。






…そうして、シクフォニメンバーはどんどん雰囲気が暗くなっていった。




このままらんが戻ってこなかったら、シクフォニを解散しようかとも考えるほどに。












…今日は、それを決めようとしていた。





していたのに。








らん
みんな~!




俺らの心配なんてよそに、明るい声で話しかけてきたらん。



頭の思考回路が、プツリと切れたようだった。



なにも、理解できなかった。



いるま
……は、らん…?



ようやく、震える声を絞り出した。



メンバーみんな、あまりの衝撃に声が出ていなかった。


らん
あ、いるま~!
いるま
っ……!




久しぶりに聞く、らんからの声。俺の、名前。



…ああ、そういや俺、「いるま」っていう名前だったな、なんて。



今さらながら、それを実感した。







そこから何を話したかなんて、覚えていない。


ただ、必死にらんを止めて、家から転がり出るように出たのを覚えている。




そして、今、らんに会うために走っている。



中学のころにバスケ部に入っていたから、体力には自信があった。



それなのに、すごく遠く感じる。



いるま
はっ、ら、ん……!



喉から出るのは息切れと、らんの名前だけ。





いるま
はぁっ…はぁっ…!



ようやくついた。


そのままインターフォンを押す。



玄関前で、らんが迎え出るのを待つ。





あんだけ急いで走ったのに、もう息切れはあがっていた。





……ガチャ。
らん
……だれ、?
いるま
え、……?
心が凍った。


嘘だろ……そう考えた矢先。


らんがコロッとうれしげな表情に変わった。


らん
…あっ!いるま~!いらっしゃい!どうしたの?
いるま
っ……!らん…?
らん
…?らんだよ?
ニコニコの笑みでそう返すらん。



それだけで、俺の心臓は一気にあたたかくなった。




いるま
っ!らん…!!
らん
うおっ…!ど、どうしたの?いるませんせー?
いるま
っ……!
つい、目の前にいるらんを抱きしめた。



…大丈夫。ちゃんと、ここにいる。


そうわかると、涙が零れそうだった。



らんは、意味が分からないとでも言いたげな顔をしている。


…こっちに散々心配かけやがったくせに。






いるま
よかった……



いるま
久しぶり、らん。



らん
……?う、うん。久しぶり…?



らん
(あれ?昨日会ったはずだよね?)




そういえば、らんの身体、異様に冷たかったな。



…まぁいいか。





ここにらんがいてくれるだけで、俺には十分だ。




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