告別式は粛々と進んでいった。
つまらない白の菊なんか献花して、それで呆気なく終わってしまった。
五条さんはお友達が多かったのに、呼ばれたのは親族の方々ばかり少人数。
私はなんだか肩身が狭かった。
みんな泣いていた。
彼女はどんな人にも愛されていたんだな、なんて、当たり前か。
火葬をします、と僅かばかりのアナウンスがあった。
お顔が見たい方は今のうちにどうぞ、と。
見たくなんてなかった。
あのひとは私の思い出の中で、永遠に綺麗なままで。
ああ、でも、こういうのを未練って言うのかな。
棺の中に、花屋で無理を言って作ってもらったブーケを入れた。
季節外れの、白い茉莉花とフリルのブーケ。
ウエディングドレスみたいでしょ。
あの真っ白なひとに、よく似合うんだろうな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!