第4話

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2019/04/12 15:17



お坊さんのありがたいお話はちっとも耳に入ってこなくて、私はぼうっと遺影を眺めていた。




--本当に、綺麗なひと。


色素の薄い前髪を流して、角度によって金にも見える瞳は片方だけ器用に閉じられている。

銀色のスノーゴーグルをおでこに引き上げ、もこもこの白のニット帽はちょっと傾けて被るのが好きな五条さん。
そういう、ちょっと捻くれたところもあったっけ。


服も髪も肌も、雪の妖精が嫉妬してもおかしくないぐらい、どこもかしこも真っ白。

きんいろの瞳だけが色彩だった。

目鼻立ちは冷たいほどに清らかな大人のそれなのに、どこか無邪気で愛らしい少女の面影が残っている。



うつくしくて、明るくて、天使みたいな五条さん。




五条さんは雪原を背景に従えて、まるで冬の写真のように見える。
けど本当は、春の写真。


よく覚えてる。去年サークルに入って初めて連れて行かれた、長野の春スキー。




私はそこで、五条さんに一目惚れした。

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