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第1話

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2019/04/12 15:17



「もう、蜜ったら……そんなに泣かないで。あたしなら大丈夫。

……分かった、じゃ、毎日メールしてあげる。
二年なんてあっという間だよ、すぐ帰ってくるから。

ほら、笑って。--ふふ、やっぱり。笑った顔の蜜が一番かわいい。


……それじゃあ、行って来るね」








身も世もなくしゃくり上げる私を置いて、五条さんを乗せた飛行機は遠くフィリピンの地まで飛んだ。

今でもあの飛行機雲が憎くて仕方ないのは、何度も裏切られた私の、強欲なエゴに過ぎない。









私は文学部の二年生。
五条さんは法学部で、ひとつ上の先輩だった。




まるで接点のない私たちが出会ったのは、大学のイベントサークル。

とは言っても出会い目的のそれではなくて、純然たる暇を持て余した天才たちのためのサークルだった。




そんなサークルの創設者、ひときわ目を引く真っ白な美人が、五条さんだ。




フレンドリーで、サービス精神旺盛で、センスが良くて、分不相応にパワフルで。

あんなに細くてか弱いのに、困っている人を放っておけなくて。

助っ人も幹事もお手のもので、毎日あちこち駆け回ってた。

人助けが好きだった。

飲めない酒を飲んでは飲まれて、当たり前みたいに私の家に運ばれてきた。



そして、まるで酔っ払いの戯れ言みたいに、「いつか青年海外協力隊に行く」って言って聞かなくて。






……なんて、まさか本当に行くなんて思ってなかったけれど。





夜行バスの車中でも、空港の土産物屋でも、五条さんは足の遅い私を気にせずどんどん先に進んでいった。


ああ、結局あのひと、一度も振り返ってくれなかったっけ。

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