第1話

(🌵)誤魔化し
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2020/06/02 09:00
「他に好きな人がいるんでしょ」
「もう別れよう」
俺は何度言われたことか。
初めて言われた時は、胸が張り裂けそうなくらい苦しい言葉だった。

それなのに最近は、この言葉に少しも傷つかなかった。

――――――――――
俺の彼女...いやもう元カノと言うべきか。
が、部屋から出ていって数分が経った。
時刻は夜中の2時を少し過ぎた頃。暗がりの中でピースに火をつける。
もち
もち
上手くいかねぇな
最近俺は調子が悪い。
すぐに彼女は出来るが、その分すぐに別れてしまう。
たばこの心地良さに酔いしれて、少しこのモヤモヤが薄れてくる。
この時間に起きてるのは、あいつしかいねぇか。
もち
もち
·····もしもし。
ねぎりょー。
ねぎりょー。
あ、もち。どした?
もち
もち
わり。今から家行っても大丈夫?
ねぎりょー。
ねぎりょー。
別に·····
もうそろそろで絶サンの編集終わるから
もち
もち
ありがと。切るよ
やっぱり起きてた。
自然と顔がほころぶ。ぶっちゃけ、ねぎが電話に出なかったらどこかで酔いつぶれていたと思う。ノーダメージとはいえ、失恋はやはりショックだ。

ホテルを出て、また火をつける。
ねぎの家はたばこを吸わせてくれない。本人がそもそも喫煙してないから当たり前か。
今のうちに存分に吸っておこう。
この前無意識にねぎの家でたばこ吸おうとしたらめっちゃキレたっけ。
また顔がほころんでしまう。頼れる友達がいて本当に助かる。

そうこうしているうちに、ねぎの家の前に着いた。
もち
もち
おじゃましまーす·····
ねぎりょー。
ねぎりょー。
よっ!お前今日テンション低くね?
もち
もち
あぁ、まぁな
ねぎりょー。
ねぎりょー。
この時間に俺ん家に来るって
まさかまた失れ
もち
もち
それ以上言うなって·····
ねぎりょー。
ねぎりょー。
お前どんだけ振られてんの‪w‪w
もう何人目だよ‪w‪w‪w
もち
もち
俺の何がダメだったんだろ
ねぎりょー。
ねぎりょー。
またそういうこと言うー
自覚ないの?
もち
もち
あぁ。
けどいっつも「他に好きな人がいるのか」
って言われる。別にいねぇけどな·····
ねぎりょー。
ねぎりょー。
浮気してると思われてんの?
もち
もち
わかんね。けど言われるんだよな·····
自覚ない。と言い切りたい。
心当たりはあるけれど、認めたくない。
元カノも元カノでどうせ適当に言ってるのだろう。
あと、俺は絶対に浮気なんてしていない。
ねぎりょー。
ねぎりょー。
なんか飲んでく?
もち
もち
あぁ。頼む。
そう言ってねぎりょーは冷蔵庫へ向かう。
自分の視界から消えた時、少し不安に思う。
彼女といた時のように、そのまま急に居なくなったりしないだろうか。
まぁ俺が彼女に「他に女がいる」ように思わせたのが悪いのかもしれないけれど。
ねぎりょー。
ねぎりょー。
何飲む?
ビールとチューハイとウイスキーあるけど
もち
もち
ビール頼む
さすが酒豪。常に酒が切れない。
この前キャスで13缶も飲んだっけ。
相変わらずだ。

ねぎりょーが、ウイスキーと缶ビールを持ってソファに座る。
ねぎりょー。
ねぎりょー。
お前きたから久しぶりにイチイチで割ろうかな
もち
もち
ほんとお前体に気をつけろよ·····
ねぎりょー。
ねぎりょー。
もちこそ酔いつぶれるなよ
2人で静かに乾杯をし、ねぎりょーがハイボールを一気飲みする。
ねぎりょー。
ねぎりょー。
うぇいよー
もち
もち
流石だなほんと
ねぎりょー。
ねぎりょー。
今日はもちの何度目かの失恋の日だろ?
ちゃんと話聞くから
そう言ってねぎりょーが炭酸水を入れる。
今日ぐらい飲みくれてもいいだろう。
そばにはねぎりょーがいる。

――――――――――
お酒は人の本性を露わにする。
言動も、行動も、そして感情さえも。