8月2日
学校で教授の手伝いをするため夢はいつもの時間に家を出る
声のする方を向くと司が同じように鍵を閉めているところだった
エレベーターに乗って下に着くまで会話が途切れることはなかった
そう言って立ち去ろうとすると司が引き止める
夢は小さい目を大きく見開いた
重なる偶然にいつの間にか夢と司は笑い合っていた
大学は夏休みということもあり、誰もいない広々とした空間に2人で歩く
すでに片付けを始めていた白川は手を止め、こちらに視線を向ける
今年定年退職してしまう白川の書類整理や研究室の部屋掃除など、とても1日では終わらない量だ
司と夢は白川が買ってきたジュースを受け取り、部屋に響いてしまうくらいの音を立てながらジュースを飲み続けた
物腰が低い白川は生徒からよく慕われている
ひと段落し、今日の手伝いは終わりとなった
家までの帰り道をまた司と夢は2人で歩く
聞き覚えのある声の方を振り返るとそこには翔太が立っていた
ズカズカと近づいて来る翔太は司の存在に気づく
翔太は夢と司の顔を交互に見る
翔太は夢の腕を掴み歩き始める
握られた腕を痛がる夢を見かね、司は翔太の腕を掴んだ
そう言って翔太の手を夢の腕からはがしとり、行きましょう。そう言って反対の方向を夢と足早に歩いて行く
司は目をパチクリとさせ夢の顔を見る
そう言い残し、司は優しく夢の腕を取り、行きましょう。そう言って走り出していった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。