なんで、、飛雄が知ってるの、、
……考えただけでも本当に嫌だ。
飛雄に私のプレー見られたとかさ、
下手くそなプレー見られたくないよ、、、
上手な人には特に、、、
……ん?
ちょっと待って
あの時、北川第一の試合(女子)を飛雄が見に行っていたのなら
確かに私のプレーを見たことは分かる。
でもさ、
普通相手の選手は覚えなくない???
その人が上手いとか、何かしら印象があるなら
分かるけど、
なんで飛雄は私の事知ってるの。
(((しかもあの時の私、ショートカットだったし
私より上手い選手なんて何人も______
聞き間違い、?
"上手かった"...って
聞き間違いじゃない……
本当に?
気を使ってるんじゃなくて
本当にそう思って言ってくれてるの??
乾いた笑い声が勝手に喉から通り抜けた
アイツの
あの父親に散々言われた。
アイツは、高校からバレーを始めてからセッターになった。
ずっと昔からバレーをしてた先輩を抜いて。
本当に気に食わないけどアイツに実力があるのは私が一番分かってる……
センスがずば抜けてるのも知っている。
でも私は
才能もセンスも
何一つ無かったんだから。
そう、アイツに言われたんだから。
結果が出なけりゃ
いくら頑張っても認められないから、
もう、私はバレーをするのは嫌になった。
選抜でも……
周りの視線、ヒソヒソ話、圧、緊張、焦り、恐怖で
思うようなプレーが出来なかった。
あの勝負の世界に踏み入るのが怖くなった。
もう絶対に関わらないと思ってた。
それでも今私がここに居るのは
紛れもなく烏野の皆のおかげ
でも、、
昔の自分はもうとっくに捨てたはずだった。
思い出したくないから。
自分自身が大嫌いだったから。
なのになんで、、
なんでっ……???
もう早くこの話を終わらせたい。
アイツの声も、知らない選手のヒソヒソ話も、
全部全部トラウマなんだよ。
思い出したくもない、早く忘れたいのに、
脳からこべりついて離れない。
話したら余計に泣きたくなる。
今だって泣きそうなのを堪えて
必死に深く息を吸って落ち着かせている。
「下手くそっっっ!!」
「何やってるんだ!!」
あの怒っている声のトーンが
あの皮肉な言葉選びが
縛り着いて離れない。
忘れていたと思えばすぐ思い出せるような
頭の片隅にずっと残ってる
今、なんて
……イラッ
飛雄の言葉に驚きが6割ぐらいあるとするならば
1割は小さな嬉しい気持ち。
残りの3割は"怒り"だ。
"気にしなくていい"???
そんなこと、出来てたらあんなに、、
今だって苦しむことは無かった。
飛雄が私の何を知っている???
あの試合を見ただけで何を、
私の"人生"を、
知ってるって言うの????
だんだん怒りのパーセンテージが
大幅に増えてきた。
でも__________
自分でも分かる弱々しい声とは裏腹に
どんどん拳を握る力が強くなる。
怒っても当たらない。
私が何も言わなければ、それで解決。
めんどくさくならない。
当たりたくてもこうやって我慢すれば
いいんだから
パンッ
……翔陽には分からない話をしてちょっと申し訳なかったなぁ。
オロオロしてたし(((
"もう聞いてこないで"
そんな意味も込めて、すっかり暗くなってしまった話に
あえて笑顔で終わらせた。
ガラガラガラッ
チャンス...!
よし、これで逃げれる______
タッ
……あんないきなり西谷先輩に出くわしたら
心臓に悪い……!!!
でも、良かった。
・
この目が見られる前に逃げられて。
_____NEXT。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!