第64話

お世辞なんかいらない
1,873
2021/07/21 14:42






なんで、、飛雄が知ってるの、、












影山飛雄
影山飛雄
お前だったんだな。
あなた
あなた
ッッ、








……考えただけでも本当に嫌だ。






飛雄に私のプレー見られたとかさ、




下手くそなプレー見られたくないよ、、、

上手な人には特に、、、




















……ん?




ちょっと待って







あなた
あなた
なんで私の事、知ってるの??





あの時、北川第一の試合(女子)を飛雄が見に行っていたのなら


確かに私のプレーを見たことは分かる。







でもさ、






普通相手の選手は覚えなくない???





その人が上手いとか、何かしら印象があるなら
分かるけど、




なんで飛雄は私の事知ってるの。



(((しかもあの時の私、ショートカットだったし









私より上手い選手なんて何人も______


















影山飛雄
影山飛雄
______上手かったから
あなた
あなた
……え?






聞き間違い、?







"上手かった"...って








影山飛雄
影山飛雄
見てて面白いプレーだった。参考になったし、正直あの時お前のプレーばかり見てた。
あなた
あなた
う、そ



聞き間違いじゃない……




本当に?






気を使ってるんじゃなくて



本当にそう思って言ってくれてるの??









あなた
あなた
ははっ、
影山飛雄
影山飛雄
日向翔陽
日向翔陽




乾いた笑い声が勝手に喉から通り抜けた












あなた
あなた
な、に言ってるの...
私が"上手かった"……?
あなた
あなた
冗談でもそんなこと言えないよ...
だって私はッ、下手、くそで
あなた
あなた
チームの足引っ張って、何にも、、
なんにも出来ない役立たずで、それで...





アイツの






あの父親クソジジイに散々言われた。






アイツは、高校からバレーを始めてからセッターになった。



ずっと昔からバレーをしてた先輩を抜いて。






本当に気に食わないけどアイツに実力があるのは私が一番分かってる……





センスがずば抜けてるのも知っている。












でも私は





才能もセンスも




何一つ無かったんだから。










そう、アイツに言われたんだから。










結果が出なけりゃ

いくら頑張っても認められないから、






もう、私はバレーをするのは嫌になった。






選抜でも……



周りの視線、ヒソヒソ話、圧、緊張、焦り、恐怖で


思うようなプレーが出来なかった。






あの勝負の世界に踏み入るのが怖くなった。




もう絶対に関わらないと思ってた。









それでも今私がここに居るのは


紛れもなく烏野の皆のおかげ







でも、、





昔の自分はもうとっくに捨てたはずだった。







思い出したくないから。

自分自身が大嫌いだったから。









なのになんで、、

















なんでっ……???









あなた
あなた
お世辞なんか、いらない
あなた
あなた
私は、上手く、ないから……




もう早くこの話を終わらせたい。





アイツの声も、知らない選手のヒソヒソ話も、




全部全部トラウマなんだよ。









思い出したくもない、早く忘れたいのに、



脳からこべりついて離れない。







話したら余計に泣きたくなる。







今だって泣きそうなのを堪えて






必死に深く息を吸って落ち着かせている。





























あなた
あなた
も、もうこの話は_____
影山飛雄
影山飛雄
その"下手くそ"っていうのは、
あなた
あなた
ビクッ
影山飛雄
影山飛雄
...あの監督の言葉のせいか?
あなた
あなた
ッッ、!





「下手くそっっっ!!」





「何やってるんだ!!」









あの怒っている声のトーンが


あの皮肉な言葉選びが





縛り着いて離れない。







忘れていたと思えばすぐ思い出せるような


頭の片隅にずっと残ってる






影山飛雄
影山飛雄
俺は……あの監督は正直言って
気に入らない。
あなた
あなた
……
あなた
あなた
……は?



今、なんて







影山飛雄
影山飛雄
誰よりも声出して、カバーして、チームメイトに声掛けて……
影山飛雄
影山飛雄
そんなお前が他の奴らより怒鳴られるのが俺は間違ってると思う。
影山飛雄
影山飛雄
なんで……そんなにあの監督の言葉を信じる?気にしなくてもいいことなのに、













……イラッ










飛雄の言葉に驚きが6割ぐらいあるとするならば



1割は小さな嬉しい気持ち。







残りの3割は"怒り"だ。












"気にしなくていい"???




そんなこと、出来てたらあんなに、、



今だって苦しむことは無かった。







飛雄が私の何を知っている???









あの試合を見ただけで何を、





私の"人生"を、







知ってるって言うの????














だんだん怒りのパーセンテージが


大幅に増えてきた。










でも__________











あなた
あなた
_____あれは...
あの監督は私の父親だよ。
影山飛雄
影山飛雄
!!
あなた
あなた
信じる理由なんて、
あなた
あなた
それで充分でしょ……





自分でも分かる弱々しい声とは裏腹に





どんどん拳を握る力が強くなる。










怒っても当たらない。



私が何も言わなければ、それで解決。



めんどくさくならない。









当たりたくてもこうやって我慢すれば

いいんだから


















パンッ






あなた
あなた
はい!この話は終わり!
日向翔陽
日向翔陽
ビクッ






……翔陽には分からない話をしてちょっと申し訳なかったなぁ。



オロオロしてたし(((






あなた
あなた
私、ドリンク作ってくるから!
練習止めてごめんね!ニコッ・・




"もう聞いてこないで"







そんな意味も込めて、すっかり暗くなってしまった話に



あえて笑顔で終わらせた。













影山飛雄
影山飛雄
ちょっとま_____





ガラガラガラッ





田中龍之介
田中龍之介
相変わらず来るの早いなお前ら!
あなた
あなた



チャンス...!








あなた
あなた
お疲れ様です!
ドリンク作ってきますね!
田中龍之介
田中龍之介
おう!ありがとな!
(...本当にいい子だよなぁ)





よし、これで逃げれる______















西谷夕
西谷夕
チース!
西谷夕
西谷夕
お、あなた
あなた
あなた
……!
あなた
あなた
お、お疲れ様です!ではっ!





タッ





西谷夕
西谷夕
……?












……あんないきなり西谷先輩に出くわしたら


心臓に悪い……!!!










でも、良かった。
















この目が見られる前に逃げられて。












_____NEXT。







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