春千夜くんが唇を噛み締めて涙を堪えていた。
何も言えなくて、ただ春千夜くんを後ろから抱きしめた。
秋風が頬にあたって少しだけ痛寒い。
『…誰も私以外にいないよ。』
" ないてもいいんだよ "
そういうと、勢いよく体制を変えられて
私が今度は彼の胸にすっぽりとおさまっていた。
ずっと我慢していたんだね。
彼は我慢していた分を、一気に吐き出すように泣いた。
声を出して、私の肩に押し付けるようにして泣いていた。
そんな彼を見て、私も泣いた。
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泣き疲れて寝てしまった彼の髪を、私は手で通りした。
『……ふふッ』
手でとかすと手繰り寄せるようにして顔をすりすりとしてくる彼は猫みたいで。
体をあやす様にとんとんとしてあげると幸せそうに眠っていた。
彼がもし、あんな風に___
箱の中に収まる日が来てしまうのなら、私はきっと耐えられないだろう。
それ以前に私が死んでしまいたくなるんだろうな。
今考えただけでも怖くて、震えてしまいそうで。
『……大好きだよ、春千夜くん。』
静かに彼のおでこにそういってキスをした。
next.
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。