本当は酔ってなんていないんだ。
この歳になると、大好きな彼に甘えたくても素直に甘えられない。
お酒の力を借りないととてもじゃないけど、無理。
涼介は私をキス魔扱いするけれど、本当は他の誰にもそんなことはした事ないんだよ。
涼介だから、涼介にしかしたくないんだよ。
なにその飛び切りの笑顔。
私はその笑顔を見られるだけで幸せだよ。
葵ってば。
酔ってるからってそんな熱い眼差しで見つめられたら…理性ぶっ飛んじゃうよ。
部屋に着くなり、彼女に着信が入る。
葵はそのままベランダへと出て行った。
誰から?
めっちゃ気になるんですけど。
外に出るくらいなんだから、俺には聞かれたくないってこと?
ベランダから戻った彼女に聞いてみた。
とか言いながら、俺の腕の中からスルリと抜け出した。
さっきまでの、あのデレデレ甘えマックスの葵はどこへ?
明らかに様子がおかしい。
彼女はコーヒーを持って、ソファーの下へ座る。
俺の横へと促す。
だって、その顔見ればわかっちゃうよ。
一体何があった?
何だよ。
いつもみたいに
『ダメって言っても聞かないくせに』
って、言ってくれないの?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。