四角から見える景色は、灰色だった。
水玉は垂れ、光を乱反射させる。
“これが未来を映してくれたらいいのに”
そう考えを巡らせた男、岩本照は、梅雨が始まりつつある東京を眺める。
デビュー5周年を迎え、半年が過ぎようとしている今、彼らは空を覆う黒雲の様な、大きな壁にぶつかっていた。
CDの売り上げも上々、
テレビへの出演も増加、
国民的アイドルグループとまで言われるようになったのにも関わらず。
彼はどうして頭を悩ませているかと言うと。
彼のシンメトリー、深澤辰哉についてだった。
今彼らは、訳あって8人で活動している。
9人の心はいつも、繋がっています、
9人の絆は最強です、
そう、何度言ったか。
まぁ、その“訳”が深澤なのだが。
深澤について話すと長くなる。
そしてこれはただの抄に過ぎない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。