第27話

第三章 いにしえのきおく⑹
111
2021/04/18 14:14
彼は、気付いていた。

手足の痺れ。
脱力感。

日に日に増していくような感覚は、決して幻想ではない。
そう、分かっていた。



けれど彼は、大して動揺せず。
“あぁ、やってしまったんだ”
そんな、納得と諦めが混ざっているような感情で。

ただ、迷惑はかけたくない。

その一心で仕事をしようとした。



しかしその目論見は、すぐ壊される。

1番の理解者とも言える同志には、彼の状態が分かっていた。

その者が出てきた時点で、彼が丸め込まれることはもう分かり切っていて。

反論するだけ無駄。
反論するだけ疲れる。

そう悟った彼は、納得して“あげる”ことにした。


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そうして彼は、
白く無機質で、鼻の奥をつんと突かれるような。
誰しもが嫌うであろう其処に、足を踏み入れたのだった。


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2週間後

無事つまらない3日間を過ごし、普通の日常を取り戻した彼は、またその場所にいた。

2週間前とは違い、今日は浅葱色の長椅子に座っている。



“深澤様、深澤辰哉様、”





名を呼ばれた彼は立ち上がり、彼の心の様な、重たい引き戸を開いた。

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