目黒「5番テーブル、シャンパン入りましたー!」
店員「うぇーい!!」
ここは、夢の世界。
男と女の欲で溢れる世界。
2921年、技術が進歩した今でも、この仕事がなくなる事はなかった。
穢らわしいことはしない。俺は。
元々そういうのはあんま好きじゃないし。
好きでもない奴とは嫌だし。
客「えぇ〜蓮くんともっと遊びたい〜」
目黒「俺は疲れてる君を癒したいの、だからさ、また此処来てよ、ね?」
客「…うぅ…うん」
紡いだ言葉は、紛れも無い嘘で。
ただ店の売り上げだけを考える。
でも、そのお陰でNO.1なのかもしれないね。
まぁ、興味なんて無いけれど。
目黒「じゃあね、また来てよ?」
客「うん!蓮くんこそ、辞めないでねー」
目黒「……あぁ、」
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目黒「すみません、今日は上がらせて下さい」
店長「あぁ、いいけど。その代わり、次はもっと頼むよ?」
目黒「うっ、す」
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何も考えず、家に帰る。
ぼーっと歩いた道は、どこを通ったのか分からない。
靴を脱ぎ、部屋に足を踏み入れる。
テレビの電源を入れると騒がしい声が聞こえた。
“今話題の芸人”
“特徴的なツッコミがクセになる”
“超明るいバイリンガル芸人”
目黒「そういえば、」
今日のお客さん話してたな、コイツのこと。
画面を見ずに呟けば、テレビの騒音が返ってきた。
目黒「どうせ一発屋だろ。」
そう、顔を上げた。
知らない顔。
知らない声。
知らない仕草。
知らない名前。
なのに。
心臓が、止まるかと思った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。