第2話

@2 うちの旦那と契約です。
80
2020/05/16 00:08
松浦 美羽
松浦 美羽
浜野さん、これ頼める?
浜野 友香
浜野 友香
あっ、大丈夫です。
ここのお店は…。
松浦 美羽
松浦 美羽
アトルーク、今大人気のカフェなの。
取材はアポだけ取ってあるから。
本当は西島さんにお願いしたかったんだけど体調悪そうだったから帰らせたの。
浜野 友香
浜野 友香
そうなんですか…。
じゃあ、行ってきます。


 会社を出た。アトルークまでは電車で1駅。都会にある会社と都会にある店で良かったと思う。人気だと言っていた店だが外には行列は見当たらなかった。
 外壁は白に塗られて、たまに煉瓦の凹凸がある。窓はなく、扉は少しだけ古そうに見えた。
浜野 友香
浜野 友香
おじゃまします…。
福田 泰三
福田 泰三
はーい、って友香ちゃん。
浜野 友香
浜野 友香
おじさん、お久しぶりです。
福田 泰三
福田 泰三
まさかタマネ出版で働いとるんか。
浜野 友香
浜野 友香
はい。取材に来ました。
…結婚式以来かな?
福田 泰三
福田 泰三
いやいや、その後にあっちのご夫婦と来んかったか?そこで突っ立っとんのもあれやし、はよここ座り。
浜野 友香
浜野 友香
はーい。

 福田泰三たいぞう。私の叔父でもあり、学生時代によく通っていた喫茶店で働いていた。その頃から関西弁と明るい性格で店は賑わっていた。
 しかし、そこから5年ほど経った後にその店は閉店してしまったのだ。そこから泰三はこの店を立ち上げ、今に至る。
福田 泰三
福田 泰三
旦那さんとはどうや?上手くいっとるんか?
浜野 友香
浜野 友香
上手くいってるよ。なんとか。
福田 泰三
福田 泰三
それにしてもあの契約内容言われた時は驚いたなぁ。
浜野 友香
浜野 友香
契約というか…試験みたいなもの。
私が本当に旦那とうまくやれるのか。
福田 泰三
福田 泰三
まぁ、おっちゃんは応援しとるよ。
友香ちゃんが幸せになるのが1番やわ。


 泰三は笑ってコーヒーと店内1番人気のスイーツを出した。カメラにそれを収めてから全て食べきった。その間も泰三との会話は絶えなかったが。


 軽いインタビューを終えて会社に戻ろうとした時、泰三は紙袋を差し出した。
福田 泰三
福田 泰三
はい、これ。
旦那さんと一緒に食べて。
浜野 友香
浜野 友香
ありがとう。
家帰ったら食べるね。


 店を出た。夏の日差しは強く、目を痛めそうだったが何とか瞬きを繰り返して会社に戻った。よし、また頑張れる気がする。会社に向かって歩き始めた。










 会社に帰ってきた時にざわめきを感じた。一体何があったのか、分からずにデスクに戻ると後輩が押し寄せてきた。



「友香さん!旦那さんニートなんですか?!」

浜野 友香
浜野 友香
…えっ?


「噂がめっちゃ流れてますよ」
浜野 友香
浜野 友香
なんで…。


 旦那がニートだと話したのはゆりだけ。つまり犯人はゆり。でも信じ難い。
 この事はできるだけ内緒にしてきたのに。

プリ小説オーディオドラマ