ゆりは私を見ながら首を傾げた。その目の奥には何か濁ったものが見えた気がした。確信していた。ゆりが言いふらしたんだと。
睨むようにゆりを見た。ゆりは笑っていて。それはいつもの明るい笑顔ではなく悪魔のような笑顔だった。
それだけ言ってゆりの元から去っていった。その背中をじっと見ていたゆりはボソリと言葉を発した。それは私には少ししか聞こえなかったけど確かにそう言った。
そしてゆりも仕事に戻ったのだ。
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私は松浦さんに呼ばれた。どうせニートがどうとかなんだろう。そんな風に思っていた。
別に旦那がニートなんて関係ないからいいんだけど。それに一̀時̀的̀なんだから。
しかし、松浦さんが差し出したのは別のものだった。
少しだけ沈んでいた気持ちが再び浮かび上がった。そして何事もなかったようにデスクに戻った。
人に何を言われたって関係ない。私たちの生活は保障されている。すこし条件があるだけだ。旦那と私が頑張れば大丈夫。
それが私の思いだった。
それは1年後叶うことになる。
そしてたくさんの人が悪い噂に流されてしまったがそんなことも知らないニートの優斗は今日もニート生活を楽しんでいた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。