第3話

@3 うちの旦那は事情有です。
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2020/05/16 00:09
篠原 ゆり
篠原 ゆり
あっ、友香さん。
お疲れ様ですー。
浜野 友香
浜野 友香
ゆりちゃん。ちょっといいかな。
篠原 ゆり
篠原 ゆり
はい、なんですか?


 ゆりは私を見ながら首を傾げた。その目の奥には何か濁ったものが見えた気がした。確信していた。ゆりが言いふらしたんだと。
浜野 友香
浜野 友香
私の旦那のことってゆりちゃんが言いふらしたんだよね。
篠原 ゆり
篠原 ゆり
そうですけど、なにか?
浜野 友香
浜野 友香
…普通言いふらすこと?ゆりちゃんを信用してるから旦那のこと言ったのに。
篠原 ゆり
篠原 ゆり
別に黙っててなんて言われてないですし。それにいいじゃないですか。顔だけですよね。
篠原 ゆり
篠原 ゆり
働いてない、家事もしてくれない。ダメ男でヒモ男じゃないですか。…あっ、金目当てと顔目当てでいいカップルですね。
浜野 友香
浜野 友香
カップルじゃなくて夫婦なの。
それに、
 睨むようにゆりを見た。ゆりは笑っていて。それはいつもの明るい笑顔ではなく悪魔のような笑顔だった。
浜野 友香
浜野 友香
私たち夫婦は愛し合ってるだけでは続かないの。様々な事情を抱えてるの。だから…旦那だってニートになりたくてなった訳じゃないから。


 それだけ言ってゆりの元から去っていった。その背中をじっと見ていたゆりはボソリと言葉を発した。それは私には少ししか聞こえなかったけど確かにそう言った。
篠原 ゆり
篠原 ゆり
様々な事情、ね…。

 そしてゆりも仕事に戻ったのだ。


 ****

松浦 美羽
松浦 美羽
浜野さん。ちょっといい?
浜野 友香
浜野 友香
あ、はい。

 私は松浦さんに呼ばれた。どうせニートがどうとかなんだろう。そんな風に思っていた。
 別に旦那がニートなんて関係ないからいいんだけど。それに一̀時̀的̀なんだから。
 しかし、松浦さんが差し出したのは別のものだった。
松浦 美羽
松浦 美羽
アトルークの記事、よかったよ。それに後で電話してみたら今度からの取材は浜野さんでお願いします、って。やったじゃない。
浜野 友香
浜野 友香
あっ、ありがとうございます。
松浦 美羽
松浦 美羽
アトルークは今後連載記事になるのを上の方が考えてるらしいの。そしたら少し忙しくなっちゃうかもだけど、よろしくね。
浜野 友香
浜野 友香
はい!頑張ります!


 少しだけ沈んでいた気持ちが再び浮かび上がった。そして何事もなかったようにデスクに戻った。
 人に何を言われたって関係ない。私たちの生活は保障されている。すこし条件があるだけだ。旦那と私が頑張れば大丈夫。
 それが私の思いだった。
浜野 友香
浜野 友香
絶対見返してやる。

 それは1年後叶うことになる。
 そしてたくさんの人が悪い噂に流されてしまったがそんなことも知らないニートの優斗は今日もニート生活を楽しんでいた。




 *****
浜野 優斗
浜野 優斗
あっ、母さん?
うん、元気だよ。
浜野 優斗
浜野 優斗
困ってること?何もないよ。
ともちゃんはちゃーんとやってくれてるし。
浜野 優斗
浜野 優斗
うん。このままいけば。そう。
じゃあね。

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