久しぶりに入る彼の部屋は懐かしかった。
白と茶色で統一されたシンプルな部屋。
『お待たせ〜。』
成瀬が部屋に戻ってきた。
「おかえり。あ、ありがと-。」
両手には麦茶の入ったコップを持っていた。
『いーえ、あなた。麦茶好きでしょ?』
ふっ、と微笑み笑いかけてくれる。
「うん…好き。」
君の方が好きだけど
そんな台詞はどこかの映画のヒロインでも言わない。
『…そーだ、勉強やるんだよね。』
「あ、そうそう。」
そういって私は英語の問題集を取り出した。
『英語か…。あなた暗記得意なんだから、頑張ればすぐ出来るようになるよ。』
成瀬は元々成績がいい。特に英語、発音もめちゃくちゃ綺麗だった。
「そうかなぁ…。」
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『I like music. My dream is to become a musician, and I practice singing every day ….』
すらすらと教科書を読み進めていく成瀬。まだこの辺の範囲だったら理解出来そう…?
「将来ミュージシャンになりたい…ってこと、?」
『お、そういうこと。私は音楽が好き。将来ミュージシャンになりたい。だから毎日歌っている。みたいな感じかな。』
”意外と簡単でしょ?”
と 丁寧にわからない所を教えてくれる。
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そんなこんなで辺は暗くなっていた。
『暗くなってきたね…ご飯、食べる?』
パタン、と問題集を閉じた成瀬はテーブルに突っ伏した。その疲れきった姿に思わず私は笑を零してしまった。
「そーだね、ご飯つくろ…!」
私は立ち上がると成瀬の手を引っ張って彼を立ち上がらせた。
“今日は何にしよっかな〜”
と成瀬はるんるんとした様子でキッチンへと向かっていた。成瀬は昔から料理が上手く、いつ食べても彼の料理は絶品だ。
『あなた、オムライス好きだよね?今日それにしようよ。』
成瀬が作るオムライスは世界一だ。私は大きく頷き、急いで成瀬を追いかけた。
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私たちは夕飯を済ませ、テレビを見ながらダラダラした後、順番にお風呂に入った。女の子優先だと言ってくれていたが、まだ休憩していたかったし、家主は成瀬なので今回は先に入ってもらうことにした。
『お風呂あがったよ。』
ソファに座りながらSNSを見ていた私の頭をポンと撫でると、成瀬は私にお風呂へ行くよう促した。
「ありがとう、入ってくるね。」
私はタオルの位置やシャワーの使い方を教えてもらい、お風呂に入らせてもらった。成瀬が出てすぐにお風呂場に来たため、室内は湯気で少し白くなっていた。
当たり前のことだけれど、置いてあるシャンプーもボディーソープも成瀬と同じ香りがして、なんだか少し、ドキドキしてしまった。
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お久しぶりです。
気が向いた時にこっそり更新していこうかなと思っております。更に進化した夢小説をお届けできれば幸いです。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!