第4話

ありがとう。『志麻』
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2018/03/27 10:02
今日も一日憂鬱な気持ちだった。何も楽しみがない。なんでこんな気持ちにならないといけないんだろう。





『あ、あなたちゃん。ちょっと第3準備室来てくんない??笑』






クスクス笑いながら私のことを呼んでいるのは、愛花、七海、柚香の3人。もう帰ろうと思ってたのに…。






「あ、…うん。わかった…。」






言われた通りに行動するしか私に選択肢はない。反抗したら酷いことされるって、分かってるから。


教室を出ようとしたとき、誰かに見られていた気がした。気のせいかな…。








『あ、来たきた〜』






「今日は何…?」






『今日はなんですか?、だろ?笑 お前敬語も使えないの〜?』




愛花がそういいながら蹴ってきた。蹴ってくるのはいつもの事だけど…昨日まではタメ口でも許してくれてたのに…。




「った…。今日はなんですか…っ…?」






『今日はぁ…あなたも今暑いだろうから、涼しくしてあげるね…?』





「…え、涼しくって…?」






『だーかーら、こういうこと。』





楽しそうに愛花が笑っている。すると突然、背後から水をかけられた。







「きゃ…っ…?!」






ポタッ…ポタッ…

と、髪をつたって床に水が垂れていく。





『あははっ!笑 冷たいでしょぉ?私たちからのプレゼント。』






「プレゼント…って……。」






『放課後にやってあげたんだから…ちょっとは感謝したらどう?』






『そうだよ。まだ授業残ってたら大変だったんだよ〜?笑』






時間なんて関係ないじゃない…。どれだけ自分たちのいいようにすれば気が済むの…。







「……。」






『…はーぁ、なんか言えよ。ほんっとお前みてるとイライラする。もう行こっ。』




柚香がそう吐き捨てて出ていった。そのあとを追うように二人もついて行った。




制服も濡れちゃった…みんなが帰るまで待つしかないかぁ…。早く乾いてくれればいいんだけど…。


校庭からはみんなの楽しそうな声が聞こえてくる。それが普通なんだろうけど、私はそんな毎日を送れたことなんてない。いいな、私も混ぜて…なんて、心の中で囁くだけ。







「こっちが溜息つきたいくらいだよ…。」






何とか今日は気温が高かったから、制服も乾いた。私は教室に戻ってからすぐに帰る準備をした。



早く帰ろう…なんて思っていたら、突然声をかけられた。





『…あなた。また明日な?』







「え、志麻くん…。また…明日。」








ひらひらと手を振ってくれているのは志麻くんだった。なぜ声をかけてくれたのかは分からない。でも、少しでも気にかけてくれたのかな、と思った。
私は手を小さく振り返してから、早足で下駄箱に向かった。

自分の下駄箱を開けると、小さく折ったメモ用紙が入っていた。




[桜田へ。西玄関前で待ってる。]



⚠ 桜田 はあなたの苗字です。



と、だけ書いてあった。無視することはできなかったので、仕方なく西玄関に行くことにした。





────────────────





『あ、桜田。』






「…え、…飯島くん…?」







そこにいたのはクラスの中心的男子。飯島遥輝くんだった。私の苦手なタイプの子。






『あのさ、急なんだけどなぁ?俺と付き合ってくんねぇ?』




突然の告白に私は戸惑った。




「え、…いや、…ちょっと…。」






『何、やなわけ?笑』






「いやって言うか…その…っ…」






怖くて上手く話せない。反抗もできない。だって私にそんな気力は残ってなかった。





『じゃあいいじゃん?』





そう言って私を壁に押し付けてきた。






「きゃっ…やめてください…っ、!」






『ねぇ、付き合おうよ?』





もう…やめて…







『…飯島ぁ。そこまでにしとき?』






「…え、…志麻…くん…。」





『志麻…なんでお前…』





『なんで?そりゃあなたが心配やったからに決まってるやろ。』




志麻くんが来てくれるなんて思ってもなかった。優しいのは知ってたけど…心配までしてくれてたなんて…ありがとう。




『心配…?俺はただ…』





『あなた、嫌がっとったよなぁ?』





志麻くんは私の腕をぐいっと引っ張って飯島くんから離してくれた。




「志麻くん…」






『…っ…はーあ、つまんねぇの。もういいわ。』







飯島くんは志麻くんには敵わないと思ったのか、さっさと帰っていった。





『…あなた、大丈夫か??』





「うん…ありがとう…っ。」





『良かった…。ほんとに心配やった。』







「ありがとう。心配してくれて…」






『…あなたが虐められてるのも知っとったのに…助けんでごめんな…?』






「いいの…気にしないで。」






『これからは…絶対助けるから…っ!』





「…志麻くん。大丈夫だよ、私の味方なんかしたら…」




気持ちは嬉しいけど…志麻くんまで巻き込みたくない。




『いや、…俺気付いたんよ。』







「?何に…?」





『…あなたのこと、好きやって。』






「…え、…うそ…」






頭が真っ白になった。志麻くんにそう思って貰えていたことがほんとに嬉しかった。




『嘘やないよ。』






「…嬉しい…ありがとう…。」







『あなた、好きやで。』



────────────────




私は家まで送ってもらった。初めて帰るのが楽しいって思えた。全部志麻くんのお陰。















少し長くなってしまいました。いかがでしたでしょうか。志麻くんとあなたは付き合うことになります。カレカノになってからのお話も書いていけたらと思っています。次回はうらたさんです。よろしくお願いします。


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