第6話

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2018/11/23 09:35
朝陽
…あれ?月影?
………佐藤、くん…
そこにいたのは、紛れもなく佐藤 朝陽だった。

あまり名前を呼んだことがなく、なんて呼んだらいいか一瞬悩んだが、取り敢えず“佐藤くん”と呼んでおいた。
[あら?あなたとご主人様ってお友達?]
…友達っていうか…クラスメイトだよ
[話したことないの?]
…話す必要ないし
朝陽
…月影、誰と話しているんだ?
…あっ…!
そこまで言ったところで、目の前に佐藤 朝陽がいたことを思い出した。

勢い余って、わさびちゃんと会話していたが…周りから見たら、絶対おかしな人だと思われる…

やってしまった…
朝陽
誰かいるのか?
佐藤くんは、周りをキョロキョロと見回したが、誰もいるはずがない。

…わさびちゃんと会話していたのだから。
[何で黙ってるんだ?なんかあったのか?]
佐藤くんの心がそう言っているけど、答えられるわけない。
…………
私が黙っていると、佐藤くんは真下に視線を下ろした。

その先にはわさびちゃんがいる。


…やばい。気づかれたかも…


その瞬間、佐藤くんはパッと目線を上げ、私の顔を見た。
朝陽
もしかして、わさびか!?
……っ!
気づかれた…

元々変な目で見られているから、この話が広がって、ますます周りから煙たがられる。…そうしたら、球技交流会の話、どうしたらいいんだよ…

と、私が悩んでいたその時。
朝陽
すっげー!!
……え…?
朝陽
わさびと会話できるとか最高じゃん!羨ましい〜!
予想外の反応に、私の方が驚いてしまった。

また気味悪がれるかと思ったのに…
……驚かないんですか
朝陽
驚いてるよ!
…そうじゃなくて、気持ち悪いとか思わないのかなって…
私の言葉に、佐藤くんは首を傾げてキョトンとしている。

佐藤くんの心を読んでも、嘘をついているようにはまったく見えない。

この姿を見てまで気持ち悪いと思わないなんて…どうかしてる。
朝陽
何で気持ち悪いって思うんだ?
……は?
質問に質問を返された。

そんな質問をされても困るんだけど…
……何でって…
朝陽
普通は“スゲー!”とか思うだろ?犬の気持ちが分かるとか。ましてや、会話もできるなんて
…あ、いや…会話ができることはあまりなくて…わさびちゃんが特別なんだと思います…
そう答えると、佐藤くんはますます目を輝かせて私を見てきた。
朝陽
やっぱ月影ってスゲーな!尊敬する!
……はぁ?
“尊敬する”とか言われたの初めてなんだけど…他人の心が読めるとか気味が悪いだけじゃん。

…やっぱり、馬鹿だから頭の中がどうかしてるのかな。
何回心を読んでも、正直な言葉しかぶつけてきていないし。
佐藤くんのアホらしすぎる考え方に驚いて、私はしばらく立ち尽くしてしまった。

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