《お願いします!》
ああ…とうとう来てしまったよ…杉下さんとの試合が…
なんか…敵チーム全員強そうなオーラ出してるし…!
[雑魚が。伊織に勝てると思うなよ]
[バスケ部いないくせに…]
[まあ、ここまできたご褒美で…ちょっとは楽しませてあげないとなあ…]
…怖っ…
杉下さんのあの強気な目で見られて、私の背筋が凍った。
目の前に並んだ相手と握手すると、ジャンプボールをするために、センターサークルの中へ入った。
…敵チームは…やっぱり、杉下さんだ。私より数センチ高い彼女は、腕をぐっと伸ばしながら私を睨みつけた。
ピ────!
試合開始のホイッスルが鳴った。
私は素早く飛び上がり、ボールに指を触れさせた。
でも、それより一瞬早く、杉下さんがボールを弾きとばした。
…相手ボールだ。
敵の中で素早くパスが渡り、あっという間にゴール下へときていた。
ブロックしようとしたが…間に合わない…!
バシュッ!と、鮮やかにシュートが決まった。
…くそっ…先制点を取られた…
私の背中をバシッと叩いた立夏ちゃん。
…おかげで気合が入ったよ。
私はすぐにボールへ視線を向けた。
敵のパスをカットし、すぐさまスリーポイントシュートを決める。
私はシュートを決めた後、すぐに持ち場へ戻る。
ほぼ交互にシュートを決めていき、残り1分ほどとなった。
点差は1点。C組がリードしている。
[守りきれば、私たちの勝ち…!]
その通り。C組は、守りきれば勝ちだから、ディフェンスを固めている。
…攻められない…いや、攻めてやる…!
相手が持っていたボールをすぐさま奪い取ると、私は敵陣へと攻め込んだ。
杉下さんともう1人に固められ、その先に行けないが…
後ろにいた味方に素早くパスを送り、私はゴール下へ入る。
その味方もゴール近くへ入り、シュートを決める!
だがリングに跳ね返り、落下…!
私はすぐさま拾い上げると、レイアップシュートを決める────!
バシュッ!
《ありがとうございました!》
ギリギリで滑り込んだボールは、吸い込まれるかのようにゴールへ入った。
立夏ちゃんは私にギュッと抱きついた。
みんなで喜びを分かち合っていると、杉下さんが近づいてきた。
杉下さんは気まずそうに下を向いた。
わお…意外と素直な人だったんだ…杉下さん…
…まあ、そこまで嫌な気もしなかったし、当然私は許すに決まってる。
私はぎこちなくだったけど、口角を上げて笑った。
私と杉下さんは軽く握手を交わすと、背を向けあい、お互いのチームの元へ歩いていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!