第10話

☀︎10
131
2018/11/27 11:18
朝陽
…それにしても…月影はこんなに運動神経良いのに、なんで体育見学ばっかりしてんだよ?
…それ言わなきゃダメですか?
朝陽
うん。一応、“よく話すクラスメイト”なんだし
…………
佐藤くんは、さっき決められたばっかりの関係を口に出し、私に問いかけてきた。
[教えてくれるまで、喋らないんだから]
という気持ちを読んでしまい、仕方なく話そうとしたその時。



ピリリリリ、ピリリリリ…
優奈
あ、ごめん。私の携帯
タイミングが良かったのか、悪かったのかの問題はさておき。山口さんの携帯が鳴ったのだ。

山口さんはポケットから携帯を取り出し、私たちに背を向け、携帯を耳に当てた。
優奈
もしもし?…あー優斗?…え?優佳が熱出して学校早退!?母さんは?…え、まだ?
どうやら、弟さんからの電話らしい。妹さんが熱を出してしまって、早く帰ってきてほしいとの催促か。

今、ほとんど一人っ子状態の私にとっては羨ましい限りだ。

だが、次の瞬間。その気持ちが一気に崩れ落ちることになる。
優奈
じゃあ、優一兄さんは?…は?彼女の家にお泊まり?こんな時に限ってあのバカ兄貴は〰︎〰︎〰︎〰︎!だったら優太は!?……まだ帰って来てない?あーしょうがないわね!すぐ帰るから待ってなさい!あ!優希と優愛は?大人しくしてる?…そう。じゃあ、10分くらいで帰るから!大人しくしてるんだよ!いいね!
ピッといって電話を切った。
優奈
…ごめん!妹が熱出したみたいだから、先帰るわ!じゃ!
と言って、あっという間に公園から出ていってしまった。
朝陽
…“先帰る”って…あいつから突っ込んできたんだろうが
…それもそうですね
まるで忍者のように、颯爽と駆け抜けていった山口さんを見て、佐藤くんがツッコミを入れた。

…っていうか、それよりも…
……山口さん、兄弟多くないですか?
朝陽
おう。7人兄弟だとよ。1番上が大学2年生の優一さん。2番目が山口で、3番目が高1の優太くん。4番目が中2の優斗くんで、5番目が…
…ちょ、ちょっとストップ!
朝陽
お?
佐藤くんの口からは、他人の情報がペラペラと出てくる。

ただならぬ予感に、鳥肌がたった。
…なんでそんなに詳しいんですか…?
朝陽
…あー…中学からお世話になってるからな、あいつとは。山口と中学同じやつは全員知ってると思うぜ?大家族だから
…へー…
意外な関係でびっくりした。

私がほうけていると、佐藤くんはさっきの続きを話した。
朝陽
で、5番目が小4の優佳、6と7が年長の優希と優愛。な?大家族だろ?
…ですね…
佐藤くんは、まるで自分の家族を紹介するかのように、山口さんの兄弟を紹介した。

…紹介されたところで、会う機会がないだろうから、意味ないと思うけど…
朝陽
…あれ?俺ら、山口の携帯が鳴る前、何の話してたんだっけ?
…うん。やっぱりこいつアホだ。バカでアホでトンチンカンな、おたんこなす野郎だ。

自分から持ち出した話を忘れて、ケラケラ笑っている佐藤くんを見ながら、私は盛大にため息をついたのだった。

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