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第1話

初夏
92
2020/09/02 08:07
甘酸っぱいひと夏の恋。
CMで流れてきたそんなキャッチフレーズに思わずため息を着いた。

梅雨も終わり、7月と思うような暑さを見せる6月、今は幼馴染、神田美桜の家で休日を過ごしている。
神田 美緒(かんだ みお)
それで、どうするの?
蓮見 かこ(はすみ かこ)
え?
神田 美緒(かんだ みお)
ど・う・そ・う・か・い!
成人式も終わったらすぐ帰っちゃって、みんな会いたがってたよ?
私の腑抜けた声にもう、と一呼吸置いてから喋った彼女は、幼稚園からずっと仲良しで社会人となった今もお互いの家を行き来している。
蓮見 かこ(はすみ かこ)
うーん、行かないんじゃない?
神田 美緒(かんだ みお)
もう、行こうよ…
というか私、かこがいないと無理なんだけど〜?
蓮見 かこ(はすみ かこ)
え〜、じゃあ美緒も行かなきゃいいじゃん
神田 美緒(かんだ みお)
やだよ、みんなに会いたいもん
今話しているのは中学の同窓会に出席するかしないかの話。
卒業して8年ぶりに集まろうかということで、私の元にも招待状が届いたのだ。
神田 美緒(かんだ みお)
でもかこ、飲み会とかそういうの好きでしょ?
なんで同窓会、特に中学の話嫌がるの?
無垢な表情は昔のまま。
私以外の前だとおどおどしてるのに私が相手となるといつもこうずんずんとなんでも聞いてくる。
蓮見 かこ(はすみ かこ)
…別に
別に…。
そうだ、特に何も無い。
いじめられもしなければ特に目立ったことも無く、平々凡々な日常を過ごしていたように思える。
だから別に。
ちゃんと的を得ているだろ。

意味のわからない言い訳のようなものをして頬杖をついた顔を美桜とは反対側の方に向けた。
神田 美緒(かんだ みお)
ふ〜ん?
疑うような眼差しを向けながらもこれ以上は聞いてこない。
彼女の好きなところはここなのだ。
何かあっても大事な所までは踏み込まない。
蓮見 かこ(はすみ かこ)
まあ、行ってあげてもいいけど
神田 美緒(かんだ みお)
ほんと!!
彼女の気遣いに心を揺さぶられてしまい折れてしまった。
彼女は彼女で目をきらりと輝かせてやったあとガッツポーズしている。
蓮見 かこ(はすみ かこ)
でも、二次会とか無しだからね
私の言葉に少しだけ不満そうな顔をしたがはーいと納得してくれたようだ。

お互いお酒は好きだが美緒は特に、酒豪という言葉も生ぬるいのではないかというぐらいに。
だからそういう二次会が終わったあとも泥酔せずにいられるらしいが、私はそうはいかない。
蓮見 かこ(はすみ かこ)
じゃあ、出席で出しといてよ
そろそろ用事とあるので椅子から立ち上がって私は美緒の家を後にした。

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