甘酸っぱいひと夏の恋。
CMで流れてきたそんなキャッチフレーズに思わずため息を着いた。
梅雨も終わり、7月と思うような暑さを見せる6月、今は幼馴染、神田美桜の家で休日を過ごしている。
私の腑抜けた声にもう、と一呼吸置いてから喋った彼女は、幼稚園からずっと仲良しで社会人となった今もお互いの家を行き来している。
今話しているのは中学の同窓会に出席するかしないかの話。
卒業して8年ぶりに集まろうかということで、私の元にも招待状が届いたのだ。
無垢な表情は昔のまま。
私以外の前だとおどおどしてるのに私が相手となるといつもこうずんずんとなんでも聞いてくる。
別に…。
そうだ、特に何も無い。
いじめられもしなければ特に目立ったことも無く、平々凡々な日常を過ごしていたように思える。
だから別に。
ちゃんと的を得ているだろ。
意味のわからない言い訳のようなものをして頬杖をついた顔を美桜とは反対側の方に向けた。
疑うような眼差しを向けながらもこれ以上は聞いてこない。
彼女の好きなところはここなのだ。
何かあっても大事な所までは踏み込まない。
彼女の気遣いに心を揺さぶられてしまい折れてしまった。
彼女は彼女で目をきらりと輝かせてやったあとガッツポーズしている。
私の言葉に少しだけ不満そうな顔をしたがはーいと納得してくれたようだ。
お互いお酒は好きだが美緒は特に、酒豪という言葉も生ぬるいのではないかというぐらいに。
だからそういう二次会が終わったあとも泥酔せずにいられるらしいが、私はそうはいかない。
そろそろ用事とあるので椅子から立ち上がって私は美緒の家を後にした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。