第6話

#5
2,355
2020/05/03 06:57
不死川実弥
結局俺ら……誰にも、愛されることなんてなかったなァ。
あなた
…そうだね…。
…俺の母親は、物心つく前に死んだ。

親父は……散々俺に暴力を振るった後、俺をあの家に1人残して、女ん所に行った。

兄弟なんていやしない。

一人っ子だ。俺は。
幼稚園、小学校、中学校時代。

俺とあなたに、友達なんてものは出来なかった。


あなたは、綺麗な緑の目を忌み嫌われ。

俺は、この生まれつきの銀髪を忌み嫌われて。
けど、あいつらはあなただけを虐める。

俺には勝てないってわかってるから。

弱い奴だけを。
……そんなあなたを、日々守る。
それが、俺らの人生だった。



そんな過去があったから。
誰にも愛されなかったから。
……そんな、嬉しくもない共通点があったから…俺らは。

簡単に、信じ合うことが出来た。
不死川実弥
あなた、平気か?
あなた
うん、大丈夫。
不死川実弥
……ほら。
手を差し伸べる。
あなた
………
その手を、お前は握って。

けど、俺の家にずぶ濡れで来た時のような。


そんな、微かな震えは……既に、収まっていた。
あなた
ふふ、ありがとう実弥。実弥のお陰で、今こうして……前を向ける。
あなた
……2人で、前を向いて歩けるんだ。
不死川実弥
……はっ、そうかよォ。
そう言って、俺らは……誰にも縛られずに。

長い長い、道のりを。









人生の終着点まで続く線路の上を…2人で歩いた。




















next

プリ小説オーディオドラマ