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12
2021/06/11

第2話

エマージェンシー
・・・う~~ん・・・・。
ふわぁあああ・・・。
眠い・・・。なんか今日は眠いなあ。寝足りない。二度寝もありか?
でも、今日はあいつ休みだし。いっぱい遊べるかも・・・。
いつもみたいに伸びを・・・って、あれ?
なんかおかしいな。いつもと感じが違うな・・・。
いつもならもふもふの僕の毛が全然感じられない。
おかしいなあ、なんでかな?ていうか、いつものケージの感じじゃない。僕、ケージで寝てたよね?あれ??
なんだか怖いな。おかしい。
そろそろ目開けて起きてみないと・・・でも、なんか瞼が重い。まだ寝てたいのかな、頭は結構はっきりしてるのに。
目開かなきゃ・・・うん、3.2.1で開けるぞ。ちゃんと見なきゃ。

ふう・・・よし。


3,2,1。




・・・・!?!?



え、なにこれ。どういうことなの?

ボクのもふもふの毛が、ない。ていうか何これ?腕、変じゃね?
何これ、先端が5個に分かれてる。

うっわ気持ち悪い!!1個1個が動いてる!!!
ていうか、後ろ足も変だなあ。

良く分からないけど、体が動かしづらい。なんなんだこれ・・・?
どういうことなの・・・あいつは?あいつはいないの?
あいつなら分かるはず。この状況が何なのか。
とりあえず移動しないと・・・でも、どうやって動くのこの体。
どうしたらいいの?鳴いたら来てくれるかな。
あいつ、ボクが変な鳴き方するとすっ飛んでくるからな。
よし、そうしよう。
うにゃあ___ってん?



ボクは間違いなく、いつもみたいに「うにゃあ」って鳴いたはずだ。いつもと同じように。
でも、部屋に響いたのは言い表せないような変な声だった。

なんなのこの可愛くない声。これがボク?嘘だ。
こんな変な体で、変な声になっちゃって、これからどうなるんだろう。ボクは、あいつに好きでいてもらえるのかな。今まで通りに接してもらえるのかな。
嫌だな。

捨てられちゃうのかな。噂話で聞いたみたいに、追い出されて、ご飯もないまま死んじゃうのかな。
あいつとも会えなくなるのかなぁ・・・。



ガタンッ___。



何?何の音なの?
怖い。でも、あいつかな。
早く来てほしいけど、来てほしくない。見てほしいけど見てほしくない。
何も言わないで。怖いよ。
ああ、音が近づいてくる。足音もする、あくびの声も聞こえる。
怖いな。怖いから目をつむっておこうか。それとも寝たふりでもしようか?

ぐだぐだ考えてたら、気付いたときにはもう、あいつはこの部屋のドアを開けていた。



ガチャリ。



どくんっと大きく心臓が跳ねる。

あいつの姿が見えて、その目がゆっくりと動き、そして、ボクをとらえた。
朔
・・・・!?えっ・・・・
びっくりしてる。ボクのこと、もう嫌いになったのかな。
ていうか、こんな変な体で誰なのか分かるのか?ボクだって知らせなきゃ。
また、だ。
ボクは「にゃあっ」って鳴いたはずなのに、変な声になった。
なんで思った通りに鳴けないの?こんなの絶対おかしい。

ねえ、ボクのこと分かるなら、嫌いじゃないならこれが何なのか教えて。
捨てるんだったら、捨てる前に教えてよ。
朔
・・・っだ、誰ですか・・・!?
いつこの家に・・・・・それにどうして裸のまま毛布を被ってるんですか・・・・
・・・やっぱり、誰なのか分からないんだ。そりゃそうだよな。
こんな体じゃなあ・・・。

・・・毛布?あの気持ちいい布か。
そういえば、ボクの身体にかけてある。あったかいな。

ていうか、裸の何が変なの?いつもボクは裸じゃん。それで、こいつだってボクのこと可愛いって抱っこしたりしてたのに。

ああ、そっか。ボクが変な体だから、変だって言うんだ。
朔
見たところあなたはまだ学生ですよね?中学生か、高校生ぐらいでしょ?
どうしてここにいるんです?家は?
待って待って。

何聞かれてるのか分かんないよ。チューガク・・・うんたらって何?知らないよ。
なんでここにいるかって、ここはボクの家でもあるんだけどな。
朔
・・・・どうしたんです、というか喋れない・・・?いや、そんなことないですよね。
名前はなんですか?
名前はるりだよ。
君がつけたんだよ。この家に来た時に決めてくれたでしょ。いっぱい可愛がってくれたでしょ。
その日々ももう無くなってしまうの?嫌だよ。気づいてよ。
ボクはたまらなくなって、鳴きまくった。
自分が考えてること、伝えたいことを全部言ってやった。

でもそれはやっぱり意味不明な唸り声みたいなのにしかならなくて、あいつにも伝わってなかった。
怪訝そうな顔をしてこっちを見るだけ。
朔
・・・まさか本当に喋れないんですか?何かを伝えたいのは分かるんですけど・・・。
・・・・・。
朔
・・・うーん・・・。警察に連絡して、身元を見てもらうか・・・。
連絡?誰に?怖い人?

やっぱりボクはこの家にはもういられないみたい。あいつとも、お別れ。

・・・おわかれ・・・。
うう。

ボクは悲しくなってうつむいた。白い毛布が目に入る。
そして、目の下をなにか水みたいなものが伝っている。

え、なに!?

・・・ああ、そうか。ボク、泣いてるんだ。こいつに捨てられるのがこんなにも悲しいんだ。
でも切り替えなくちゃいけないんだ。生きなきゃいけないんだから・・・。
朔
ん?そういえばるりは・・・。
!!!!!

ねえ!!ボクだよ!!!気づいて、ボクはるりだよ!!
朔
・・・!!!

け、ケージが壊れてる!!こんな壊れ方、ど、どういうことなんだ・・・!?
ッるり!!!どこ!?
部屋の中を叫びながらボクのことを探し回っている。

ボクはここだよ、ずっといるよ!いなくなってないってば!!ねえ!!
ああもう、なんで変な声しか出ないんだよ!?いつもみたいに鳴きたいだけなのに!!
朔
・・・泣いてる?どうしたんですか・・・。

そうだ、俺が飼ってる猫を見ませんでしたか!?ラガマフィンの、小さくて白くてふわふわした子なんですけど!
だから、ボクなんだよ・・・・。

疲れた。何も伝わらないし。何もかも分からない。
何か困ったら、いつもこいつが察して対処してくれたのに。いつもみたいに撫でてよ。いや、まず気付いてくれ。
ボクは頭で考えることをやめてしまった。
何もできないし分からない。どうしようもない。

そして、ボクは無意識のうちにいつもの癖で、こいつの身体に頭をすりつけた。

いつもやっていたことだ。そうするとこいつはパッと笑顔になって、撫でてくれたんだ。
朔
・・・!!
こいつのパジャマに顔をうずめたまま、ボクは動きたくなかった。少しの間、前と同じ気分に浸らせてくれよ。顔を上げたら笑顔があって笑ってくれるはずの状況だって思いたいから。
朔
・・・・まさか・・・・いや、でもあり得ない・・・・
ん?何?何か言ったかな。

あーでも顔上げるの面倒くさいや。どうせ捨てられるんだし。もう少しこのままがいいなあ。
朔
・・・・・・るり?
え?

ボクの名前、呼んだ?もしかしてボクに向かって?本当に?

ボクは期待で胸が膨らんだ。パッと顔を上げたら、戸惑った顔が見えた。
ああ、さては気づいたんじゃなくて、もしかしてって思ったんだな。よし、いいぞ。気づいてもらえるのかも!

ボクは精一杯可愛く、「ぅにゃぁ~ぉ」って鳴いた。でもやっぱり思ったような声は出なかったから、代わりに最高の満足そうな顔を見せてやった。ちょっと疲れ気味だけど、許してね。
朔
・・・・ううーん・・・・物は試しだな。

ねえ、もし俺の言葉が分かるのなら、首を縦に振ってみて。
へえ!すごいな、事態は進展したっぽいぞ?

首を縦に振る、か。上手く振れるのかなこの体。
試してみたら、こいつめちゃくちゃビックリしてる。ははは、面白い。
朔
言葉は通じてるのか。聞こえてるし分かるけど、喋れないのか。不思議だなあ・・・って本人を前に失礼だね、ごめん。
朔
・・・・変なことを言うけど、もしかして・・・るりなの?
そうなら、首を縦に振って。
来た!!!!天才!!!!!

ボクは首がおかしくなりそうなぐらい勢いよく何度も首を振った。
ああ、よくぞ気づいてくれた。やっとだ、よかった。

・・・あ。
でも、ボクがるりだって分かったら、こいつは気持ち悪いって思うんだろうか。こんな変な体になったボクのことなんか、好きじゃなくなるんじゃないかな。
嫌だ。また嫌なことが起こる。最悪だ。
朔
まじか・・・・。本当にるりなのか?すっかり人間だけど・・・。
え?人間?

人間って、こいつとか、まりの飼い主のことでしょ?ボク今人間なの?
朔
・・・ていうか、めっちゃ美少年なんですけど・・・。
あっ、服着なきゃじゃんか!!待ってて、とりあえずパーカーとか持ってくるから!!!
あいつ、ドタドタ走ってどっか行っちゃった。

いやいや、そんなことよりもだな。
ボク人間なのか・・・。

そういえば、いつもボクのことを撫でてくれた手と、ボクの腕の先はそっくりだ。見てみれば腕だって似てる。これが人間の体なのか・・・。触れてて分かっていたけど、本当に毛がないな。
さっきまでそれどころじゃなくて気付かなかったけど、ものすごく寒い。くしゅんって変な声も勝手に出た。あ、これくしゃみってやつだな。あいつが風邪引いたときにしてた。うわ~、人間って不便。
朔
・・・はいこれ!とりあえずシャツとパーカーとジーンズ。サイズは大きいかもしれないけど、着てないよりはマシだよね!
あ、下着・・・・ちょっとだけ待ってて、すぐ買ってくるから!!
戻ってきたかと思えば、今度は外に行ってしまった。やれやれ、慌ただしいな。

あいつが置いていったこの・・・何だこれ。布のような、洋服というものは一体どうしたらいいんだろう。
あいつはこういうのを身につけていたけど、どうやって着るのかなんて知らない。ボクは服なんか着たこともないからな・・・・(以前一度あいつが猫の服を買ってきたことがあった。ボクの趣味とはかけ離れていたから全力で拒否させてもらった。)
ボクは首を左右に動かしたり上下に動かしたりしながら時間をつぶした。

そのあと帰ってきたあいつに服を着させられ、いろいろ質問されたけど当然答えられない。あいつはすごく動揺していたけど、ひとまずは状況を飲み込むことにしたようだ。
でも、完全にボクだとは信じ切れていないみたい。まあそれは仕方ないな、ボクだってまだ信じたくないんだから。

慌ただしくしているうちに一日が終わってしまった。はあ、こんなことになるはずじゃなかったのに。丸一日楽しく遊んで過ごすはずだったのになあ。
朔
ケージが壊れてたのは体が大きくなったから・・・と考えればまあ、辻褄は合う・・・のかな?ううむ、やっぱり意味不明・・・。
二人でこの異常事態についていっぱい考えてはみたけれど、やはり意味不明だ。
どうしたらいいのかさっぱりわからん。しばらくはこのまま人間の姿なのだとしたら、それに順応しなくてはならない。明日から頑張らないと・・・。
ボクは心の中でため息をついて、目の前にいるあいつの身体に頭をすりつけた。
するとあいつは、前みたいに頭をなでてくれた。

ああ、ちょっとだけいつも通りだ。日常っていとおしいなあ。


そう思いながら、ボクは小さく笑って見せた。