秋も通り越し冬。昼間はまだしも朝と夜は寒い。そして、今日も寒い夜しかも雪がちらついている。留三郎は夕河の部屋で過ごしていた。
厠を済ませて戻る途中、夕河の目に明かりがついている保健室が見えた。前の渡り廊下に豆が散乱している。偶然出会った留三郎がやって来た。
答えぬ夕河を留三郎は覗く、夕河は怪訝な顔で保健室を見ている。
留三郎も保健室を見る、その時。障子が僅かに開き、その中から、鼻水と涙でベタベタな顔になった伏木蔵が這いずり出てきて倒れた。
夕河は只ならぬ物を感じ取り、伏木蔵に駆け寄る。しかし嫌な臭いがしたから夕河はすぐに吸わないように覆面を着用し、伏木蔵に近寄る。そして伏木蔵を救い出していた。
ミニコーナー
『もっぱんとは、沢山の刺激物が入った竹筒で、今で言う催涙弾です。』
夕河が恐る恐る中を覗くと、そこには同じく、鼻水と涙でグチャグチャになった伊作、数馬、左近、乱太郎が横たわっていた。
乱太郎とまだマシな伏木蔵曰く、節分の為、不運を払おうと豆巻きをしたが、豆に足を取られた伏木蔵が薬棚を倒してしまい、さらにうどんを作って来た左近先輩が薬と豆に足を取られ、熱々のうどんをぶち撒けそれの一つが数馬先輩に被り、飛び上がっと同時に火鉢をひっくり返して炭が飛び、不運にももっぱんに引火してしまったそうだ。
しばらくするとたまたま遭った伊助が火薬委員会と偶然出会った留三郎を連れて戻って来た。
あまりの惨状に思わず絶句した。それからはみんなで協力しながら何とか保健委員会を救出した。
その夜。
布団で横になっている伊作を看病しながら留三郎は言って夕河は照れていた。
しかしもっぱんにやられている伊作がまともに動けるはずは無かった。
部屋に戻って生け花を取らずに残りは全て保健委員会に寄付するように伊作に渡した。
サンシュユの花を差し出したら伊作は男泣きし、夕河は苦笑いして留三郎は笑っていた。そしてしばらくしてからはもっぱんにやられていた乱太郎と伊作は夕河を連れて薬草取りに行った。
伊作先輩と左近先輩と伏木蔵に快く迎えられ夕河の顔もにこやかになる。
夕河の持ち前の丁寧な挨拶に乱太郎が突っ込む。伊作先輩がくすっと笑う。
少し屈み尋ねる。夕河は周りを見る。
ガシッ!夕河を誰かが後ろから抱きしめた。
夕河が振り返ると、嬉し涙を流している三反田数馬先輩が夕河を見ていた。
大泣きし出した三反田先輩を乱太郎、伏木蔵、左近先輩、伊作先輩が宥める。
三反田先輩がすっ転んだ。
そんなやりとりを夕河はジト目で見ていた。
三反田先輩も夕河同様ジト目に。
寒すぎるダジャレに乱太郎達は盛大にすっ転んだ。
そんなやりとりしているうち、夕河と数馬はがっしりと握手を交わした。留三郎は自主トレしに裏裏山に来ていたらきり丸としんべえを見かけて訪ねていた。
しんべえの言葉を聞いた途端に留三郎は真っ青になって冷静を失った。
留三郎は大慌て乱太郎達の元へ行った。
留三郎は自主トレする気はならなくてすぐに後を追った。
一方で保健委員会はそんな事など知らずに裏山の森の中を歩いていた。
伏木蔵が首をかしげるが数馬先輩がツッコミ、左近先輩が首を横に振った。
懐からペーパーを出し、少しもらい左近先輩は何処かへいった。
乱太郎と伏木蔵がこけかけた。しばらくしてから左近先輩が戻って来て、再び歩き出した。薬草を集めながら裏山の山道に入るとき、数馬先輩が短く悲鳴をあげた。
夕河は懐から薬と包帯を取り出し差し出す。
そんなやりとりを後ろから追って来た留三郎が見ていた。
それからは夕河の用意した道具は要所要所で役に立った。高い木の上に生えている薬用の苔を採るのに鉤縄。洞窟に生えるキノコを探しに打竹。何時もなら何か不運に見舞われる保健委員会だが今回はすんなり薬草が集められ裏山のてっぺんまで来れた。
伊作先輩に言われ、側に来ると、そこにはなんとも美しい眺めだった。地平線の彼方も見えるくらいの光景。
気がつくと伊作先輩は夕河の手を握っており、他のメンバーも側に寄って来ていた。
お礼を言われて夕河もにっこりと笑う。
それからはお弁当を食べ、保健委員会のメンバーと遊び、薬草を摘んだ。
隠れて見ていた留三郎は帰ろうとした時だった。夕河の瞳色が氷みたいな青みが強いアースアイに変わり、助けに行ってそして伊作先輩が邪魔な石を投げた。
ゴチ〜〜ン!!!
夕河が指差した方向を見たら崖崩れが遭ったので助けに行き、間に合っていた。その夜。留三郎は伊作にタンコブの治療をしてもらっていた。
伊作の笑い声に、留三郎は笑いを浮かべた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!